2009年5月アーカイブ

どこでもセーブ

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 ある知り合いのオヤジがこう言いました。

「日本をダメにしたのはSONYと任天堂だ!」

 ♪やめられない、止まらない♪になってしまうゲーム大好き青少年たちを憂いでのご発言であります。

 SONYさんにも任天堂さんにも「いつもいつも息子がお世話になっております~」のアタクシ。お世話になっておるのに文句を言えた義理ではありませんが、この偉大なる2社さまを筆頭にゲーム業界さまには是非ともお願いしたいのでございます。

「どこでもセーブ」を作ってもらえませんか。

「タケコプター」も「どこでもドア」もいらないから、まずはこっちを先にお願いします。

 これさえあれば全国の、いえ全世界の母たちの血圧上昇を抑止することができるんです。

「そろそろゲーム、やめなさ~い」

 母は誰しも天使ですから(じゃないと24時間365日無料ご奉仕でコストパフォーマンスがめちゃった悪いったらありゃしない我が子の世話なんかできゃしません。そういう意味でも母は誰しも心清き天使であります)

 最初はやさしくやさしく言っております。

 子どもは大抵この時点では「わかった~」とか「今やめる」とか調子いいこと抜かしやがります。

「もうすぐお夕飯よ。早くゲームを終わらせて」

 母のトーンが若干高くなりましたが、そんな微細な変化を気にしているようじゃ将来大物になれませんから子どもは大抵無視します。

 母は言います。

「ちょっとー? 何やってるの? 冷めちゃうでしょう? 早くしなさい!」

 子どももまったくの阿呆ではありませんから何か返事をしなければ極めてヤバイ状態に陥るというのは重々承知。そこでこう言って切り抜けます。

「今、セーブするとこだから。ちょっとだけ待って!」

 母はなんてやさしいのでせう。

「そぉ? なんかやめようと努力をしているみたいだから、ここはちょっとだけ待っててあげましょうか」という気になったりするもんです。

 ゲームに興味がない母にはこの傾向が顕著にでます。

 意味不明な横文字を自信たっぷりにエラそー言われるわけですから

「セーブ? なんだか知らないけど横文字じゃない?(嬉)」なんて勘違いを起こしてしまいます。

 この「セーブ」という機能。不思議なもので「(ゲームを終了するために)セーブをしよう!」と決意した時点から、あらら不思議。待てど暮らせど出来ないしくみになってるらしいです。

 いやね、こんなことはアタクシの家だけに起きる特殊現象なのかと長年思っておりましたが、どうもたくさんの天使母たちに聞いたところ、どこのご家庭でも「セーブポイント」とやらに辿り着くまでに時計の短針が動きかねないくらいの時間がかかるらしいです。

 これが試験直前だったりしたもんにゃ、もう大変です。

 天使母だって天国から地上、一気に地獄まで行き着くような勢いで話しますから、母たる者、地獄のお声で話すときには家中の窓を閉めてからが鉄則です。

 さもなくばご近所に「あら~、○○中学は明日から中間試験なのねぇ」という個人情報が
筒抜けになってしまいます。

「アンタ、セーブに何時間かかってるの!  いい加減にしなさいっっ!」

 子どもも憎たらしいことにこう言うでしょう。

「何時間もかかってねぇっし!」

 アタクシはこう思うんであります。もし「どこでもセーブ」という機能が付いていて母が怒鳴った瞬間にゲーム終了ということが出来るものであるならば、あのお宅のゲーム機は2階から空を舞うこともなかったであろうし、あのお宅のゲーム機も"カナヅチゴン"なんて"タンスにゴン"じゃないんですから、そんな悲惨な運命を辿らなくてもよかったと思うんです。

 もっと言えば、あのお宅のゲーム機も鍋で煮沸消毒されるような目に合わずに済んだかもしれません。ゲーム機だって「俺は医療用具じゃねー!」って叫んでたかもしれません。

 尚も言うと、あのお宅のビデオとDVDとテレビのコードも一度に"ブッチン"ってことにはならなかったかもしれないのです(母が怒ってコンセントにはまっているコードをすべてブッチンとペンチで切断したため、すべての情報機器が昇天なさったのであります)。

 ああ、ゲーム機よ、君死に給うことなかれであります。

 たかがセーブ、されどセーブじゃあ~りませんか!?

 各メーカーさんにはご尽力いただいて、ドラえもんのポケットから「どこでもセーブ」を出していただきたいものであります。

 しかし、アタクシは最近、更なる鬼門に気が付いてしまったわけなのです。

 パソコン。こちらは非常に便利なものではございます。それはアタクシも認めようというものです。しかしですね、これがいかん。消えるのが早すぎなんです。

 アタクシ、姑息な女でございますから、そぉ~とそぉ~とお子ちゃまのお部屋に入ったりなんかして「何してるのかなぁ?」なんて飛び切りの笑顔で語りかけたりするわけです。

 コントローラーを必要とするようなお道具ならば握っていなくちゃ商売になりませんから、子どもは必死にコントローラーを持ったままです。いわゆる現行犯逮捕ってなもんです。

「なんでゲームしてんの?」これで終わりです。話も明朗簡潔で大変よろしい。

 しかし、パソコンはいけません。瞬間にして画面が変わっていたりしますから、子どもの傍に近寄ったところで画面にお勉強っぽい文字が映し出されてたりするんですね。

 お子ちゃまは言うでしょう。

「アンだよ!たっくよー、せっかく集中してんのに!」

 あるいは、こうおっしゃるかもしれません。

「勉強ですが、何か?」

「履歴を見せろと言えばいい」ですって? いえいえ、そこは敵のが一枚も二枚も上手でございます。そんなん先刻承知で履歴なんてもんは消されてますから。

 証拠隠滅してる暇があったら漢字の一個でも二個でも書いていただけませんかね~って親がお願いしてどうする! になったりするんですよ。

 嗚呼、かくもゲームとの戦いは続くわけであります。
 
 アタクシ、手をこまねているのもナンザンスから著名な先生様のもとに伺いました。おひとりでは不安でしたので複数のその道のプロという先生様に伺いましたの。

「ゲーム? いいじゃないですか。トコトンやらせておあげなさい! やり尽くせば飽きます」

 どの先生様もこうおっしゃいました。

 ってことはですよ、先生様。トコトンまでやっていないからやるのだと? トコトン行くとこまで行きゃ引退するのだと? そういうことですね? ああ、光が、光が見えて参りました。

 アタクシ、喜んで同じような状況下である母仲間にご報告申し上げましたの。

 母仲間のひとりが言いました。

「トコトンっていつ? 何時何分何秒 家、もう高3なんですけど?」

 ああ、アタクシは悟りました。

「どこでもセーブ」はゲーム機やパソコンに付けるものではなく、己が子どもにこそ付けておくべきものであると。

 あのぉ~? 最先端の科学技術を誇る各ゲームメーカーさん。子どもに付ける「どこでもセーブ」を開発していただけたら大ヒット商品間違いないと思うのですが、いかがでしょう。


鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話


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聖職

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 私立が「怖いなぁ」って思うことのひとつに「放出」がある。

 家の家風に合わないから「アンタハンはどっかよそに行っておくれやす」という放出である。

 キリスト教系の学校では「神のご意志」で「ある日突然」お沙汰が下ることがある。つまり隣に座っていたヤツがある日突然居なくなるのだ。

「神のご意志」があったらしいと実(まこと)しやかに噂が流れる。

「神のご意志」ならば仕方ないということで、とくに追究されることもなくその話は何となくフェードアウトになっていくのだと聞く。

「現実に"神のご意志"はあるのか?」とかなりしつこくキリスト教系の先生方に聞いて回った。

 ・・・。嫌われた。

 しかし、根性で聞いて回ったいろいろな学校の先生方の話を総合するにこうである。

「授業態度やら提出物やら遅刻やら無断欠席やら学業成績やら素行やら生活態度やらをこれでもか! っていうくらい、それこそ何年にも渡り、嫌われようが反抗的態度を示されようが、しつこくしつこくねちっこく言い続け、正しい(と本校が考える)方向に舵をきってやってるのに、舵自体が・・・折れた。

 もうこれは新たな舵で大海原を航海させるほうがこの子羊のためであると判断して新たな船出をさせるのです。ある日突然に血も涙もなく追っ払うなんてことあるわけがございませんでしょう? わたくしたちを何と思ってらっしゃるの、りんこさん?」

 ってことである。

 失礼致しました、そげな努力を日々してらっしゃるとは露知らず不届き至極、申し訳ねーこってすm(_ _)m。

 キリスト教系学校に限らず私立中学の先生方はかなり努力してらっしゃる。

 溺れる子羊が出ないように奮闘してらっしゃる学校は本当に多い。

 しかしまた、どんなに先生方が努力をなさっても結果としてドロップアウトをしてしまう子どもたちも、当然ながらいるという事実はある。

 自らの意志で「この学校」ではなく、もっと他のどこかへと旅立つ子もいるし、「この学校」では学力が伴わないために子羊がかえって可哀想な境遇におかれてしまうので、もっと学力が適合したところへと送り出される場合がある。

 通常はこの二つが重なって新たな船出を迎えることになる。

 今回、仲の良い友人にそのへんのところを教えてもらった。

 彼女のお嬢さんは進学校で有名で当然偏差値も高値でらっしゃる中学に入学していた。そこまでは「よかったね~」だったのであるが、子どもが中学に入るや否や私とは互いに慰め合う者同士になったのだ。

 お嬢さん(仮に巴里ちゃん)の経緯はこうだった。

 中1の夏休み、成績不振で呼び出される。テストの成績が良くないだけではなく提出物もほとんど出していないことが判明。

 また不幸なことに中1の担任の先生とも折り合いが悪く、散々注意されても素直に聞き入れることができなかったそうだ。

 中2、中3のときは成績は相変わらずだが、その担任の先生とは折り合いが良く友人関係の悩みごとなども相談にのってもらえ、巴里ちゃんはそれなりに楽しい学校生活をエンジョイしていた。もちろん担任の先生は高校進学に関しても尽力してくれたそうだ。

 そして、やっとの思いで進学した付設高校だが、勉強は相変わらずで結局成績も上がらず、2年に進学するための必要単位が取れずに、このままだと留年と宣告され、いろいろと話し合った結果、自主退学と相成った。

 当初、留年も考えたらしいが、やはり巴里ちゃん、後輩たちと同じ学年になることには抵抗があり、不登校になる恐れがあったので退学することになったそう。当然、転校するという道もあったのだが、それを巴里ちゃんは選ばなかった。受け入れてくれる学校を考えたとき、そこに通ってくる子たちが巴里ちゃんと同じように勉強が嫌い、または何らかの理由で不登校になっているなど、環境的に問題があるのでは? と親が懸念したのだそうだ。

 そこで自宅で勉強し高卒認定試験を受け見事合格、この春に同級生と同じく大学生になるように大学受験に臨むことになっている。

 巴里ちゃんの母は言う。

「学校の対応にまったく言うことがなかったかというと、そうでもない点もある。
 それは、どうしても姉の学校と比較してしまってなんだけど、姉の先生は提出物については成績をつける前にうるさいほど本人だけでなく家にも電話をして催促をするのね。

 それでも成績不振や出席日数不足などで単位が取れそうにない時は特別に補習するなどして、なんとか単位を取らせるの。

 巴里の学校の場合は本人にはしつこく言っているようなんだけど、それ以上は特になく、結局成績をみて親が慌ててしまう。

 まあ、私の甘えと言ってしまえばそうだし、普通の子は成績に反映されると思えば次回からは気をつけるでしょう。それをせずに、学校へただ遊びに行っていた巴里がいけないんだけどね。

 それに、家のお父さんが塾には通わせない方針だったし、家庭教師などもってのほかだったので、私が巴里の日常を監視しなければならず、それも失敗だったとは思う。

 今でも反省や後悔はたくさんあるんだけど、救われていることは、巴里がね、未だにあの学校に遊びに行けることなの。

 一番心配だった巴里の"こころ"の問題も彼女なりに解決させているようで、引きこもりにもならずホッとしているんだ。

 退学届を出した最後の日、学年主任の先生が『それでも君の母校はここなんだからね。立派に中学は卒業しているんだから、いつでも遊びに来なさい。私がこう言うのは社交辞令でも何でもなく、君の誰からも好かれる性格が言わせているんだよ』と言ってくださったの。実際、退学後も同級生と連絡を取り合っているしね。

 どうもね、巴里の退学の理由が成績不振という情けないものではなく、巴里にそれなりの考えがあってのことと受け止められているようなのね。

 それと、高校になってバンド友だちの輪が広がって、他校の子たちにも学校を辞めたことを話したら、『ロックだね』って前向きの反応をしてくれたこともあって救われたんだと思うんだよね・・・」

「そうだったんだぁ・・・」と私が答える。友は続けてこう言った。

「りんこ、中学受験はね、こうなっても、やっぱりして良かったと思う。その後の展開は本人次第。ここの学区の公立中学を考えるとやっぱり私立のほうが良い環境だと思うから。反抗期真っ盛りの娘たちが先生に素直に従うはずもなくて内申取れなかっただろうし(笑)
 私立の先生方は、中学時代の反抗期はあって当たり前、それを過ぎないとまともな大人になれないとさえ思っているって感じしない?

 だからだよね、どんなに生意気なことを言おうと受け止めてくださるし。

 多分それは、高校生になって成長した姿を見ることができるからなんだと思うんだよね。いくら中学時代に生意気なことを言っていても、数年後にはもっと大人な考え方ができると確信しているんだろうなぁって思っているの。

 巴里もね『もし子どもができたら幼稚園受験させよう』とまで言っているから、私立中学に進学したことは後悔していないみたいよ(笑)」

 いろんな道があるよね。学校に対する思いも当然ながら人それぞれだし。

 私は今、娘(私立中3)に関しては息子(私立中高出身)の時と同じでこう思う。

「思い切り泣いて泣いて、そしてそれと同じくらい笑って欲しい」と。

 いろんな学校の私立の先生方と話をさせてもらって来たけれど、男子校、女子校、共学、宗教、無宗教関係なく、ひとつだけ共通点がある。

 先生って職種は「子どもが好きだ」。

 それだけで、充分だと思う。

 他に何が必要(いる)だろう。


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横三フェスタ 夜の部

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「横須賀三浦地区 私立中学フェスタ」においでくださった皆さま、雨の中、本当にありがとうございました! おかげ様で盛況の内に無事に終了することができました。

 りんこ枠、10分間×4回という限られたお時間でどれだけのことが話せたのか、さっぱり自信がございませんが、先生方の熱い魂は感じていただけたのではないかと思っております。お役に立てましたならば幸いです。

 あれからですね、お片づけ、撤収なんつー作業がありまして、その後は先生方の真面目な?  反省会がありまして、そして夜の部へと突入するわけでございます。

 フェスタ「まとめ」の巻でも申し上げたように、神奈川の私立中学の先生方、驚くほど仲良しです。横の繋がりがメチャ強固なんですよね。見せてあげたいくらいです。

 夜の部では各学校のいろんな話が飛び交います。

「都内の○○学園の学長は素晴らしい! 人望厚いのは無理からぬところだ! まあ、人望厚いのと同じくらい、よく飲むけどね・・・」

「○○中学は○○から人材を引っこ抜いて来て改革に着手、すごい手腕で受験者数を増やしている(ずるい)」

 果ては「○○学院の○○先生(♀)は若いときから大酒飲みだったが、飲んでも飲まなくても怖い」

「○○学院の○○先生はすごい美人だ。一緒に飲みたい♪(願望)」

「○○中学の○○先生は独身で可愛い。どうだ、先生(独身)、紹介してあげよう!(押し付ける)」

「じゃあ、今度、○○中学と○○中学の若手教員の飲み会しますか!」

「ははーい!僕も参加で! (←40代後半既婚者、管理職、若くねっし・・・)」

「ダメ! 先生来るとぶち壊しになる! (若手教員の恋路を潰した経験有り)」

 なんつー話題が次から次へとコロコロ変わります。

「○○学園は指導方針は一貫性がなくていかがなものか! その点、○○学園にはブレがない! りんこさん、ブレないっていいことだと思わないか! アッ、僕、烏龍ハイ、もう一杯!」

 もうほとんど、酔っ払いの会話なんですが、この人たちの教育にかける意気込みは半端じゃありません。

「りんこさん、僕はね~、子どもが好きだー!!」

「家の子たち、見に来てくださいよ、最高かわいいんですよ、いい子ばっかなんです!」

「いや、家の子たちが一番かわいいに決まっとる!」

 と生徒自慢が始まったりもします。

 この会話文では「先生」としていますが、先生方、愛称でお互いを呼んでらっしゃいます。

 それも何か新鮮で、本当にいいお仲間なんだなぁって微笑ましく感じるのです。

 まあ後半は、どこにでもいるオッサンとオバさんの会話になるんですが、日曜はフェスタでただ働き、翌朝、朝は7時過ぎには業務を開始して部活の面倒もみるんですから、丈夫ったらありゃしません。

 そんなこんなで熱い夜が繰り広げられていったのでございます。

 アタクシですか? なんか調子こいて飲んでたら、すごい頭痛で翌日は死んでました。

 ああ、情けない・・・。

 日本酒はもう絶対やめた!!

とりんこ横三_1.jpg



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去る5月17日(日)に東京国際フォーラムで行なわれました「ベネッセ進学フェア」。

たくさんの方のご来場をいただきましてありがとうございました。

当日、お越しいただけなかった方々のために、ベネッセさんが諸先生方とりんこの講演DVDを無料でくださるそうです。

もうすぐ締め切り。

お入用の方はベネッセコーポレーションまでお申し込みください!

■応募電話番号
フリーコール 0120-944-786

■応募締切
5月30日(土) 21:00

朝小5段_w.jpg
↑クリックすると大きくなります。





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 6年生になるとトイレが長くなる子、続出だ。

 あそこしか一人になる自由な空間がないからね。でも一分一秒を焦る母には気が気じゃない。母が勝手に決めたスケジュールがあるんだもん。

 白状すれば私にも覚えがある。お風呂のときはキッチンタイマー回したっけ。ほっときゃ、息子も娘も1時間でも2時間でも風呂で遊べるヤツだから。警告音を鳴らしたね。

 トイレも当然長くなっていた。だから母は年表やら日本地図やら諺やらを張りまくったのだ。そしたら速攻出てくるようになっちゃってまったく親のこころ子知らずだったっけ。

 この時期、6年子どもはみーんな売れっ子芸能人並みのスケジュールだ。大変なのはわかっているけど母はついキレちゃうね。

「一回、アンタをトイレに流したるわー!!」

 いえね、トイレ大好き少年が模試の結果を見せながら
「まあまあ、そう怒らんと水に流し」って言ったからぶち切れたんだそうな。
でも普通は小6トイレに流したら詰まって後が大変だからやめとく方が無難だよね。

 なんでこんな話かと言うと、トイレに模試を流す受験生いるよね。証拠隠滅をしてるんだろうね。問題そのものだったりもするし、解答用紙だったりもするし、もちろん模試結果も流されやすい。
親が怖いのもあるし、そんな点数は認めたくないっていうのもあるのかな。だから「なかったことにするためにトイレに流す」って作業が入る。 

「嘘をつく」なんて子どもだから当たり前。ましてや受験生だもん、ホントのことなんか言いにくい。

「今日は塾さぼりたいなぁ」とか

「宿題してないけど、したって言えばマッいっか」とか

 いろんなこと思いながら過ごしてる。

 塾の先生に聞いてみたらカンニングっていうのも結構多いらしい。
 プロが見るから解るのにね、頑張って覗き見したんだろうにその答えが間違ってて「ハイ、ご苦労さん」なんてこともしょっちゅうだって。

 いわんや、解答丸写しなんて普通よ、普通。側に解答があったら見たいよね。そのたびに気合入れて怒らなくちゃいけない母は重労働だよ。

 ついこないだもこんな母がいた。

「ぜってー150点満点とってK太に威張り返すんだ!」と鼻息荒く出て行った息子がいたんだと。お昼の12時過ぎにメールが来て「死にたい」と。

 母は慌てて塾に電話して先生に話をしてもらい、その後息子は無事帰宅。

 母は息子に「飛び込むなら、JR、バス、タクシーはやめてね。家のローンでいっぱいいっぱいだから。あ、それから、飛び降りるなら、片付けの人のことを考えて大きい袋2重にして、飛び散らないようにしっかり結んでから飛び降りてね」とにっこり注意事項を伝えたそうだ。

「これくらい言わないとやってらんねーよ!!!」ってその母が明るく言うから、母も胆が据わってくるよね。

  これだけの時間と金を費やした挙句、我が身から発せられる言葉は毒蛇のようだし、やすらぎの我が家は地獄絵そのものになってしまう。

「これでもやる価値あるの?」

「こんなことして何になるの?」

「私だけだよ、最低最悪は私だけだよ」って私はよく思って泣いていたな。

 もっと子どもらしい生活があるんじゃないのか? とか、いくらやっていないとは言え、受験しない子の数倍は勉強をしている我が子を怒鳴るのはおかしいんじゃないかとか、それでも決めた道はやり抜いて欲しいとか、その決めた道は本当に正しいの? とか、もう訳わからなくなっちゃって、気が付けば100日前とっくに過ぎちゃって、もうやるしかないのに、何やっていいのかもわからない。そんなグチャグチャした思い、母はみんな持っている。

 子どもにキツイ言葉を吐いちゃったから「これじゃいけない。絶対今日はやさしくしよう!」って決意して「私は女優、私は女優・・・」ってつぶやくも、子どもが持って帰って来た成績表を見た途端、そんなのすべてぶっ飛んで「なんじゃ、こりゃ~!?」って松田優作になる母ばっかだよね。

 女優飛び越えて一瞬にして男優、しかも伝説の名優になっちゃうんだから才能あるよね。

 テキストは子どもに向かって投げる武器だし、ゲームは鍋で煮るものさ。

 ゴミ袋は泣きながら「もう受験はやめ!」ってプリントを突っ込むものだし、

 受話器は「先生、家はもう辞めます!」って塾に涙声でダイヤルするものさ。

 そうなんだよ、そういうもんなんだよ、中学受験は。そりゃいいか悪いか聞かれたら、いいわけないじゃん、ダメ母さ。

 どのお偉いさんの本を読んでも、どの先生方のお説を聞いても、そんなん「アウト オブ 眼中」問題外に決まってるじゃん、当たり前。

 だけどね、いーじゃん、ダメ母で。

 だって偉くもないし、すごくもないし、こころも狭いし、周りといっぱい比較もしちゃうし、偏差値表も気になるさ。そんなちっちゃいヤツなのに、今日も子どもがいるから飯は作らないといけないし、風呂も沸かすよ、母ってだけでやらなくちゃいけないことが山ほどある。

 ダメだけど今日も何とか母を辞めずにやってるし、子どもだってこんだけ酷い母なのに、ちゃんと「お母さん」って今日も呼んでくれてるじゃん?

 この世の終わりってくらい子どもに怒鳴ったから泣きながら我が子が部屋に消えたけど、2時間経ったら泣いてた我が子が寝っ転がってエヘラエヘラとお笑い観てる。そばで母もうっかり大笑いしてるんだから世話はない。ハッと気が付き「テレビ観てる暇ないでしょーっ!」なんて言っても、そもそも説得力に欠けるわな。

 だけどいーじゃん。親子だから出来るのさ。

 ある有名な塾の先生が言ってたけど「子どもは受け入れられたらそれで幸せ」なんだって。だったら、あなたの子どもはこれで充分幸せじゃない。

 誰も褒めてくれないし、誰もすごいなんて言ってくれない。それどころか哀れみの視線を送ってくれるかもしれないね。

「こんな生活させて可哀想」

「怒鳴ってばかりで嫌になった」

 確かにそうも思うけど、こんな生活させなくても、あなたはきっと我が子に怒鳴っていたし、勉強しないよりはした方がいいでしょう?
 
 私ね、中学受験は末期がんの治療に似ていると父の闘病を見ていてそう思う。

 父の主治医はこう言ったの。

 「これからはどの道を選ぼうとも後悔の連続です」って。

 もっと早く検査をしていればとか、あのとき手術をしなければとか、やっぱりあっちの治療をすればよかったとか、こっちの病院にすべきだったとかで、どっちに行こうが何を選ぼうが、必ず後悔する気持ちになるってそう言われたの。でも家族で一生懸命考えた結果ならそれしかなかったと思って前向きに今日を懸命に生きてくださいってそう言われた。

 中学受験に例えると、もっと早くやればよかったとか、この塾じゃなければとか、はじめから受験なんてやめておけばよかったとか、この学校じゃなければとかいろんな思いが交錯すると、そう思う。

 中学受験がいいか悪いかなんてわからない。

 でもいーじゃん。親子で目指したものがあるってことは、それだけで宝物だよ。

 一度この道に入ってしまうと、やめても突き進んでも、どこの中学に行っても必ずと言っていいほど立ち止まる。

「これでよかったのかな?」って立ち止まる。

 それでも家族でひとつの目標に向かって頑張ってきた日々は色褪せない。

 あなたはあなたの家族の物語を作ればそれでいい。

 と、ちょっとだけ卒母の私はそう思う。


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惚れてまうやろ〜

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 アタシはもうとにかく熱い男が好きだ。

 熱く語ってくれちゃうと五反田だろうが円山町だろうが付いて行きかねない。残念ながら、誰も誘ってもくれないが・・・(ごめんあさ~せ、お下品で)。

 そんなことはどうでもいい。

 アタシが以前取材させていただいた塾の中にこんな先生がいた。

「恨むなら僕を恨んで欲しい」

 きゃー!! 何? 何? 来たよ、来たよ、アタシの好きな熱いバージョンかぁーーー!!!???

 先生はこう言った。

「受験はね、親のドラマ、子のドラマ、塾の生き残りのための仕事としてのドラマ、この3者の共演なんです。どれも必死なものです。ただ受験だけは悲しいかな、すべての子どもが第一志望というわけにはいかない。98%くらいの母親が受験に対して何らかの怨念を持つと思います。愚痴ひとつ出ないっていう人はいないでしょう。

 塾はね、りんこさん、お母さんの愚痴のはけ口にならないといけないんですよ。お母さんの煮詰まりがお子さんに向かうんですね。そうしたらお子さんも煮詰まる。親子で煮詰まるとロクなことにならない。お母さんの愚痴がちゃんと聞ける塾じゃないとダメなんです。お母さんは大いに塾を捌け口にして欲しいんです。

 最後、3者がみんなでどんなに頑張っても結果が付いて来ないときがあります。そのときは、塾のせいにしてお母さんは逃げて欲しい。

『塾長がダメだったから落ちたんだ! あんな塾にやらなければ受かってたのに! 塾のせいだ!』って逃げていいんですよ。いや、逃げないといけないって私は思います。

 子どもが悪いんでも、お母さんが悪いんでもない、責任は塾にあるから。僕を恨んでいれば、家庭に責任はないってことになります。失敗だと思ったら塾長を恨んで母は逃げなさい。僕はね、それを受け止めるだけの覚悟があって、この仕事をやっています」

 実際に恨んだ女がいたそうだ。息子の第一志望校が不合格だったそうだ。その女は散々塾の悪口を塾長の前で叫び、結果、数ヵ月後、妹をその塾に入塾させて来た。

「この子をよろしくお願いします」と。

「恨むなら僕を恨め」

 中々、言える言葉ではないと思う。


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「結婚したい!何でもいい、誰でもいい、絶対結婚したい!」と思ったとき、
あなたはどうするだろうか?

 とりあえずは「男」と出会わなければどうしようもないわけで合コンなりお見合いなり
結婚相談所なりに出かけるであろう。

 出かけたはいいが、いい男やらピンと来る男やらが全然見つからなかったら、
あなたが次に起す行動は何だろう?

 ある女は「次よ! 次こそはきっと白馬に乗った王子様がパッカパッカと現れるに相違ない!」と次なるチャンスに賭けるであろうし、
 
 ある女は「やめた! もぉ~やめたっ! 金と時間の無駄だー!」と一時退却を決めるかもしれない。
 
 またまたある女は「ああ、アタシ、年も年だし、そろそろ御託を並べるのは止めにして適当なところで手を打つか!?」という決断をするかもしれない。

 りんこが「中学受験と結婚は似ているのであ~る」との学説? を発表して早5年。

 数々のご賛同のご意見をいただいているが、この「結婚相手選び」はその中でも際立って似ているものなのだ。

「いい男」あるいは「ピンときた男」が見つかればそれにこしたことはない。結婚したいという対象が具体的にあることは間違いなく幸せなのだ。恋する女ほどパワー溢れるものはいないからだ。全身、コラーゲンの塊だ。

 志望校が決まるということは、それに向かって矢を射るべく弓矢を引くということである。

 3回入試であれば3本の矢を持っているということであるし、1回きりなら全神経を集中して的を射抜けるように準備をしなければならない。

 照準が定まるということは、そこにだけ意識を集中することができるので、戦う上で有利であることは間違いない。

 一方「今はいい男がいないから結婚相談所は退会しよう」という決断ができる女もまた素晴らしい。「機が熟していない」という決断によって、また違うものにパワーを注ぐことが
出来るという選択なのだ。

「いい学校が見つからない」ということは「中学受験」は我が子にとって機が熟していない証拠かもしれない。スッキリさわやかに切り替えて、時間と金を取り戻し未来へ備えることも決して悪い選択とは言えないと思う。

 突き進むのか、熟しを待つのか、どちらにしても不幸どころか幸せな選択である。

 そして残った「結婚したいのにいい男がいない!」と彷徨う、この女。
「相談所に大枚払った。もう時間もないし、ここらで決めたい、でもいい男がいない」という女は不幸なんだろうか?

 いや、実はそうではない。彷徨う女もまた幸いなのである。

 彷徨う女は大抵あっちだ、こっちだと揺れているうちに自分の考えがまとまらなくなっているのである。選択肢が多いようで、まったく選択肢がないというような奇妙な状況に追い込まれているのだ。

「決め手がない」ということは「どの学校も同じように思える」ということであって、詳細に言えば「どの学校も可もなく不可もなく思える」。つまり許容範囲が広いのである。

 母子で許容範囲が広いのであるから、逆に言えば、どこに行こうが、それなりにきちんと
その色に染まれる母子と言える。その色に染まれるということは実は結婚生活ではかなり重要なことなのではないだろうか。

 どこに行っても、いかなる環境であっても順応していける子どものほうが母から見て、ある意味安心感があるのではないだろうか。

 つまり、もうどこにしていいかサッパリ分らなくなってしまった女はこうしよう。

 受験には日程がある。これはどうしようもない。アチラが決めることなので、こればっかりは文句を言っても始まらない。この日程の中で、家から通える範囲、平均偏差値のプラスマイナス5、女子校、男子校、共学、大学付属、学費、制服、その他の些細な嗜好で決めていい。

 受験は「好きで好きでたまらない男との結婚」でももいいし「まあ、この男ならそこそこ幸せかなぁ? と思った結婚」もまた有りなのだ。

「受験」をするのだと決めたならば、志望校が決まらなくとも自信を持って突き進んでいい。

 そういう女たちが実際に卒母となったとき、意外に思うかもしれないが「この男しかいない!」と熱く語った母よりも3年経ったら幸せだったということがよくある話。

 中学受験はこのように実に深いものなのだ。


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後ろめたさのススメ

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 うんうん、キレちゃうよね~。
 間違いなくキレちゃう。母はみんなキレてるよ。

 安心していいよ。これは100%どの母も間違いなくキレてる、断言できる。だって調べたもん、アタシ。

 たま~にね「アタクシはキレたことなんかございませんのよ、おーほほほ」って女もいるけど、大丈夫、ソイツは単に記憶喪失なだけだから言わせておいておくれ。

 ただね、全員キレてるから「じゃあキレていいんだ!」ってことじゃない。

 あなたもそうだと思うけど、みんな、キレた後にすごく後悔しちゃうじゃない?

「ああ、なんてこと言っちゃったんだろう」とか

「これじゃやる気が出るどころか逆効果だわ・・・」とか

「私は最低最悪だ。母親失格だー!!」とかね。

 自分を責めるよね。悪いことをしてるわけじゃない、それどころか普通の小学生よりも何倍も勉強してる我が子にキレる。単に「やる気がない」ってだけで「成績が上がらない」ってだけで最愛のはずの我が子にキレるんだから、泣けてきちゃうよね。教育評論家の先生方がこぞって怒り狂うシーンだよ。

 わかっているのにキレちゃう。それは嫌だけど、自分が止められない。

 アタシはね、いろんな事例を見てきて思った。

「後ろめたいからキレる」って。

「こんな過酷な生活させてごめんよ~、でもやることやれよ!」だったり

「悪かったな !お弁当、冷食ばっかで! こっちも仕事で忙しいんだよ!」だったり

「問題が解んないって(アタシも解らん)、なんで先生に聞かないの!」だったり、

 自分の中に裏表があるから余計に腹立つってことがある。触れられたくないところを一突きされた気分になるから、ほんの少しの後ろめたさで、言わなくていいことまで、この口が言っちゃう時があるよね。

 でもさ、それって中途半端に後ろめたいからダメなのかも。

 こんな女がいた。

 子どもには「良い中学」に行って欲しいと心底願っていた。でも、長きに渡る中学受験生活がホントに苦しくなっちゃったんだよね。

「宝物だ」って公言する我が子を泣いて怒鳴って傷つけて・・・。

そんな暮らしが本当に嫌になっちゃったときがあったんだって。

で、その女は偶然、恋をした。しようと思ったわけじゃないけど恋に堕ちちゃったわけさ(彼女はシングルマザー)。

 子どもは一生懸命には見えないけれど、とりあえずは過酷な受験戦争の中にいる。それなのに母のはずの自分は内心浮かれて恋してる。冷食チンなんて比較にならないくらいの後ろめたさなんだとさ。

 彼女はどうなったか?

 ものすごく子どもに対してやさしくなれたんだって。

 後ろめたさが半端じゃないから。

「りんこ、浮気するダンナはその後ろめたさから妻に滅茶苦茶やさしくなることがあるって説があるじゃない? 私ね多分、それだと思った」

 その子はその後、第一志望の「良い中学」に無事に入学、ソイツは未だに彼に"恋するオバさん"になっている。

 つまり、なんだ。後ろめたさも中途半端じゃいけないね。

 一般の夫子ある身での受験中の恋沙汰はリスクが高いと思われるけど、そこまでしなくても中途半端な後ろめたさが解消されることもある。

 あなた、キレそうなら遊びなさい。

 洋服を大量に自分だけ買っちゃうとか、豪華なランチを家族以外の自分だけ食っちゃうとか、子どもにはゲームを禁止してるくせに「デスパレートな妻たち」全24巻一気に観ちゃうとかね。
 どうせ我が身はデスパレートなんだからいーじゃない、そのくらい!?
※「デスパレート」とは せっぱ詰まった、がけっぷちの、絶望的な、という意味

 あなた、ノミの心臓なんだから、遊ぼうったって「豪華客船海外の旅」とか「ホストクラブ一晩貸切り」なんて大技使えませんって。大丈夫、あなたが遊ぶったってたかがしれてます。そんなことくらいで、子どもにほんのちょっとでもやさしくなれるなら、費用対価は充分だと思うけどどうだろう?

 そしてね、あなたも来年「アタクシ? キレたことなんかございません!」ってニッコリ微笑むくらい記憶喪失な女になればいいってアタシはそう思う。


鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話


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 ふん、悪かったね、図々しくて!

「上手に話せない」って、ランチの席で機関銃みたいにしゃべってるのおめ~だろ!?

「先生の前だとダメなんです」ってか?

 おめ~「いつでもいい人に見られたい、人に嫌われたくない症候群」だな?

 なんだ、同じじゃん、アタシもそうです!(うるさい! ホントはそうなの!)

 塾の先生とか学校の先生にね、ものすごく数多く会って来て気が付いた。共通点があるんだ。
先生って名が付く人は基本教えたがりのしゃべりたがり!

 つまり、ものすごく人が良いんだな。

 相当人が良くないと、わざわざ自分の自由時間を割いてまで誰かに何かをしてあげようなんて思わないのに、好き好んでそれをしようって人がウジャウジャいる世界、それが教職なんだよ。

 今回も先生方にすごくたくさん話を聞いて回ったんだが、ある塾の先生はすごかった。

「そんなこた聞いてない!」って何度も言うのに、自分の生い立ちから、なぜ愛する妻と結婚に至ったかまでを赤裸々に語るんだな。しかも延々。

 あたしゃ、伝記作家か!?

 先生ってお話好きなんだよね。

 だからね、上手に話す必要はないんだよ。向こうはある意味、話のプロなんだから、上手に話せなくても、さすが相手の意を汲む日本人同士、母の気持ちを察してくれるのさ。
 何でもいいじゃん。素直に

「気が狂いそうです」でもいいし

「段々寒くなって来て・・・(受験が近づいているかと思うと気が狂いそうです)」でもいいし

「お弁当を届けに来ました・・・(もう、こんな生活、気が狂いそうです)」

でもいいじゃない?

何か語りかけようよ。

そしたら、顔色が余りにもどす黒くなっているあなたを見て先生は言うかもしれない。

「どうしました? お母さん」

 そしたら、あなたは「おめ~なんて産んでねー!」って心の中で叫びながらも涙目で熱く先生を見つめましょうよ。

 それから二人の仲は急速に深まって、聞いてもないのに、あちらから「おっ、お母さん、×男君、第一志望は仕方がないにしても併願は相当考えないとマズイですよ」なんて天使のようにやさしく言ってくれちゃうわけです。聞きたくなかった、こんな言葉! になるかもしれないけれど、やっぱり話さないよりは話してくれた方がありがたい。

 仕事や何やかやがあって塾まで顔を出せない母も大勢いるでしょう。

 じゃあ電話があるじゃん。取ろうよ、受話器。

 話そう、何か。

 目的はひとつ。あなたが落ち着くためなのよ。中学受験は途中で迷う。迷って迷って獣道さ。だからこその道しるべが必要なの。

 多少、口臭がきつかろうが、お腹が出ようが、道しるべになってくれそうな先生はいた方が迷わない。女は地図が読めないんだから、道しるべ、大いに使おう。

ただし、稀に「地図が読めちゃう女」もいるから、そんな女は誰にも頼らずゴーイング マイ ウェイ、我が道を行けばいい。


鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話


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開けてドロドロ玉手箱

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 中学受験ってたくさんのいい面があるとは思うけど、その一方で「どうなの、これは?」と思うようなこともいっぱいあって、手放しで100%褒められるような類のものではないよね。

 やって初めてわかる"玉手箱"。目の中、涙だらけになる母たちばっかだよ。

 みんな、内心、ドロドロしてて、そんな自分が限りなく嫌になっちゃうときがあるよね。

 どうしようもない孤独感に震えている母がいるでしょう?
「私はひとりぼっちだよ」って夜中に泣いている母がいるでしょう?
 でもね、みんな、そうだよ。外から見えないだけ。

 とくにね、母同士の葛藤は辛いよね。
 ストレス発散のランチ会のはずがストレスでお腹いっぱいになっちゃうもの。
6年母はただでさえナーバスになっていてガラスのこころを持ってしまっているのだから、ちょっとした刺激でこころにヒビが入るのよ。

 私も覚えがあるよ。息子のときは仲が良かった、少なくとも悪くはないと思っていた母友から直接

「りんこの家は途中から入って来たのにドンドンクラスが上がっていいわね。何年やってもこっちはサッパリなのに」と言われ、私はかなり傷付いたっけ。

 逆に娘は塾の中でも古参の部類であったけど、途中から入塾して来た仲良しが最初から最上位クラスになって、おまけのサンパチにその母から「偏差値のメニュー表のどこを受けても受かるって先生から言われたんだけど、行かせたい学校がないの~。どこを受けたらいいと思う?」」と真顔で相談され、

「コイツ、一回海につけちゃろか!?」と思ったことがある。私が非力だったので実行されなかったが、それくらい許される行為じゃなかろうか、腹の立つ。

 どちらの母も別に悪気があるわけでも嫌味で言っているわけでもない。思っていることが口から出たに過ぎないのだ。

 もうどの母も傷付きやすくなっているから、ほんのちょっとした一言で仲間に亀裂が走っちゃう。「一緒にがんばろう」っていうのは、かなり達観している人か、こころがすごく広い人以外は無理かもしれない。

 最近、面白い話を聞いた。女の子同士は伏字で会話するらしい。
 仮に優子と秀子と凡子の会話としておこう。優子と秀子はどちらも塾の最上位クラスでトップレベルの中学を狙っているが凡子は真ん中のクラスである。

 凡子「ねーねー?秀子ってさ、どうやって勉強してるのぉ?」
 
 優子「えっ?普通に黒板に書かれたことを暗記するだけだよー」

 凡子「うそ!毎日やってるの?」

 優子「うーん・・・。まあ一応(一応に点々)ね。でもそんなやってないよ~(3時間しかね)・・・」

 秀子「ウソでしょ? もっとやっているでしょう?(絶対やっているでしょう?)」

 ここがポイントで必ず明るく言うのだそうだ。

 優子「やってないってばー!!(やってるけどね、応用とか)秀子こそやってるでしょ?」

 ここもポイントであくまで明るく返すらしい。

 秀子「やってないよー!! どんなにやっても優子には敵わないよ~(アタシもやってるけどね。負けるなんて思ってないし!)

 優子「えーーー!? 秀子のが頭良いじゃん! アタシなんかバカ中のバカだよ!」

 秀子「そんなことないよ、優子がバカ中のバカなら、アタシはバカバカバカじゃん!!」

 優子「ええーーー!? 秀子がバカバカバカならアタシなんてバカバカバカバカ・・・」
 
 以下省略。いつの間にか凡子ちゃんは会話に入れなくなりましたとさというオチなんだそうな。

 これが子ども同士の会話ならまあ可愛いもんかもしれないが、実は母たちも大して代わり映えのしない会話をしてるんだな、これが。

 なんか「勉強しないアピール」があっちでもこっちでも繰り広げられ、真に受けた母が成績発表で馬鹿を見るパターンが多い(アタシじゃん、それ!)。

「家の子、ホントやらなくて」っていうアピールは気をつけた方がいいのだ。

 あるところに幼稚園から仲良しの母子2組がいて時を前後して中学受験塾に入会したらしい。翔君は智久君より半年早いNデビュー。その理由が「『智久君よりも先に始めないと、置いていかれるから半年早く始めるんだ』と翔が言うから入れたのぉ」と翔ママ。

 もちろん智久君の入塾予定日を知っていての行動である。智久ママはムッとしながらも予定どおり半年遅れのスタートにしたそうだ。

 Nではめでたく同じクラスになったものの智久君は成績順の一番後ろの席。翔君は一番前の席だったらしい。

 翔ママは智久ママにこう愚痴る。

「ウチは全然勉強しないから、困っちゃう・・・」

 どうやら、翔君に智久君の成績を確認させている翔ママ。ある模試がクラスで同点1位だったときがあったらしい。

 翔ママはすかさずメールで「翔がね『さすが智久君だね!点数一緒だった』って喜んでいたわ~」って言ってきたんだそうな。

 まあ、なんやかや言いながら翔君はクラスアップに成功する。それでも翔ママ

「あら~、智久君、前列の方でがんばってるじゃない」と毎回のカリキュラムテストの度に言われ、智久ママは精神的に参っている。

「とにかく、どこにでも付いてくる! 志望校の学校説明会にも付いてくる。成績だけは、前を行く!」とお冠の智久ママなのだ。

 どこにでもある話と言えばそれまでなのだが、受験期間中は相当辛い。

「車で行くなら家の子も乗せて」ママも困るし、「何か情報ない?」ママも困る。

 悪気がないだけに相当罪だと私は思う。

 解決策はただひとつ。「距離をおけ」これしかない。
 受験期に友だちが一人や二人減ったっていいではないか。ただでさえ受験期はストレスが多いのだ。

 姑(トメ)に「あんな程度の低い学校、まさか私の孫を行かせるつもりじゃないでしょうね?」などと昔の知識をご披露されちゃったり、

「こんなに勉強させられて、遊びにも行けなくて雅治君は可哀想ね~」などと言われているのだ。これ以上、ストレスを増やしてはいけない。姑(トメ)とはこの先も付き合わなければならないので「ごめん、何言ってるかわからない」「ワタシ、日本語わかり~ません」と外人嫁になったつもりでサラリと賢く撃退しよう。

 しかしである。友だちという顔をして近寄って来ている"親しげな人"はいなくても困らないではないか?

 今やるべきは、あなたの子どもが「6年間通って良かった、ありがとう、母さん!」と言ってくれる学校に入っていただくために努力することであって、親しげな人と仲良くすることではない。

 繰り返すが中学受験は母にとって孤独である。

 暗がりの中を手探りで、かすかに見え隠れする光を頼りに少しずつ少しずつ進むものなのだ。他人と光の強さを競っても、今の位置を確かめ合っても、そんなことに意味はない。

 お受験母は精神的に自立するべきなのである。

 りんこが撃たれ弱い6年母に贈ろう、4か条。

 ひとつ、メールを返さなくても付き合いが悪いと言われるだけだ、ほっておけ。

 ひとつ、車には乗せてもらうな、乗らせるな。

 ひとつ、説明会には一人で行け。

 ひとつ、ランチの話は右から左、聞き流せ。

 以上、健闘を祈る。


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「重松のススメ」

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 娘の中学受験時代に彼女のそばで中学受験頻出作家の作品を読み耽って(ふけって)いたのだが、調べてみたら同じことをやっている母が多かったので「何処も同じ」と結構笑えた。

 本好きな子どもの母は自分の涙腺が壊れてしまった本をさりげなく子どもに薦めて更なる国語読解力の強化を図るし、日本語が不自由だと思われる子どもを持っている母は私が過去やったように「読み聞かせ」をして「出でよ! 読み聞かせた問題!」と入試待合室で呪文を唱えたりするのである。

 意外と読み聞かせた問題が出る、あなどれない。ありがたや、頻出作家様々なのであるが、この度、もっとありがたい効用を発見したので、それについて今回は語ろうと思う。

 ある大手塾に通う6年生、仮に福田君としよう、がいた。
 彼はおとなしく目立たない少年であったが素直なやさしい"いいヤツ"である。

 福田母の悩みはどうにも成績が上がらないこと。むしろ6年春以降は下がる一方でますます悩みは深刻化していた。

「ノートがないってなんでそんなのがなくなるの!」
「なんで授業で散々やっている単元なのに間違えるの?」
「もっと真面目にやらないから!」

 母の言葉の勢いはドンドン増していくが、反比例するように福田君の勢いはドンドンなくなっていく感じで母は本当に途方に暮れたらしい。

 ある日、彼女は塾のプリント整理を思いつき我が子の鞄に手を突っ込む。

「やっぱりまたノートがないわ・・・。どうしたらそんなのがなくなるのかしら! あったまくるわね」と言いながら、残っているノートをパラパラと開けた。

 母の手が止まった。

 ところどころ不自然に破られた痕(あと)があるばかりか「バーカ」「死ね」「おめでとう!不合格」という文字が躍っていたのだ。

 母は失神しそうになりながらも息子の帰りを待った。

「お母さん、これを見つけちゃったんだけど・・・?」とノートを息子の前に広げる母。

 しばらくはじっと黙ってうつむいていた福田君が涙をほろほろこぼしてしまったから、母は恐れていた想像が事実なのだと確信して絶句したらしい。
 もう随分前から塾のクラス内でイジメがあって福田君は集中的に狙われていたのだそうだ。

「『やめて!』って言えばいいじゃない?」

 母は腹立たしいのと悔しさと悲しさと自分の浅はかさに苦虫を噛み潰したかのような顔で聞いたと言う。

「言ったよ。でも言っても聞いてくれるようなヤツらじゃないんだ・・・」

 我が子が虐められている。頭の中が空っぽになるほどのショックだったと言う。
 当然、塾に対処をお願いしに行ったのだが、思うような効果は現れなかったらしい。

「塾をやめようかとか、転塾しようかとも思ったけど、その時点で6年9月よ。
カリキュラム的にも違う塾ではキツイと思うし、個別って言ってもここらにないし、何より家の子が受験は止めない、この塾で頑張るって一点張り。だったら、ここで頑張るしかないって気持ちを切り替えたの」

 それから彼女は変わった。
 成績のことはとりあえず横に置いておいて息子の横に張り付いたのだそうだ。

「私が何でも先回りしてやって来たのがいけなかったのかな? とか、反抗しない子だから、うまくいっているのだろうって深く考えもしなかったのがいけなかったのかなっていろいろ思った。この子に今、一番足りないのって何だろうって一生懸命考えたときにひらめいたの。そうだ、自信をつけさせようって。
 自信もって自分の意見が言えるような子にしようってそう思ったの」

 そして彼女はひとつの方法を試みる。重松清を息子に音読させたのだ。

 黙読ではなく、読み聞かせではなく、息子が一字一句を読んでいく。

「『ナイフ』でしょ? 『きよしこ』でしょ? 『エイジ』に『半パンデイズ』。
もちろん国語なんか大嫌いだから、つっかえつっかえよ。でもつっかえていいから、ゆっくりでいいから大きな声で読んでみてって言って、私はずっとそばで聞いていたの。何も言わずに聞いてたの。

 読み終わったら『とっても上手かったわ、上手に読めた』って言って褒めた。最初はひどかったわよ、日本語に聞こえないどころか声も小さいもの、聞き取れないわ。でも本当に徐々にだけど意味が解って読んでるなぁって思って。息子の声に私も泣いちゃって、ふと見たらあの子も涙を流してて。一日、5分もやらないでおこうって思ったけど、その内に息子はスラスラと読めるようになって、止めても止めないの。1冊読み終わるのも、そんなに日にちはかからなかったと思うわ。りんこ、私、重松には救われた・・・」

 ある日、彼女は塾が同じという女の子ママからこんな話を聞いたらしい。

「ウチの娘がね、こう言うのよ。『福田君、変わったんだよって美咲が言ってた』って。美咲ちゃんっていうのは福田君と同じクラスの可愛い子よ。いつもうるさくしている太田君だっけ?あの子がいつものように『福田、ノート貸せよ!』って言って来たらしいわ。『あ~、また始まった』って女の子たちは思ってたらしいんだけど、そのときね福田君がこう言ったんですって。
『これは僕のノートだから貸せない』ってね、キッパリ断ったんだって。

 で、太田君が囃すようにしつこくしたら、徳井君っていうイケメンの子がいるらしいんだけど、その子が「いい加減にしろよ、太田!」って怒ったらしいわ。徳井君もカッコ良かったそうだけど、福田君もやるじゃない?って女の子の間で評判になったんですって・・・」

 福田君の母はこう言った。

「りんこ、その話聞いて、私、涙が溢れるほど嬉しかったんだけど、息子には何も言わなかったの。頑張ってるんだなぁ、この子は本当に自分で強くなろうと努力してるんだなぁって、そう思ったら、よし、お母さんはバックアップに回って絶対伴走してみせる!って」

 福田君の話には続きがある。

 年が明け、受験本番間際の塾では壮行会が開かれた。塾生たちはみんな、変なテンションで緊張感は隠せない。みんな不安なのだ。

 そのとき福田君が立ち上がってクラスにこう言ったんだそうだ。

「次は合格祝賀会で会おうぜ!」

 徳井君が続けて「お~!絶対、みんな勝って会おうぜ!」って言って福田君に握手を求めたから、次々と握手大会みたいになっちゃって、太田君ともガッチリ握手を交わしたんだそうだ。

 太田君はこう言ったらしい。

「福田、オマエが落ちたら、なんか俺のせいみたいになって嫌だから、オマエ絶対落ちてくんなよ! 気合入れてけよ!」

 福田君が笑いながら「わかった、頑張るよ」って答えたから、徳井君が出てきて「太田、福田は確実!心配なのはオマエなの!」って言ったから一同大笑いになったと聞いている。
 
 中学受験は過酷だ。勉強以外にもいろいろある。

 母の人間関係も濃くなるが、子どもたちだっていろんなストレスに悩まされ、友だち同士の関係がギクシャクすることもたくさんあるし、イジメだって何処にでもある。何処にでもあるけど、実際にイジメを受けたと知った母にとっては子どもが苦しんでいるのに直接は何もしてあげられない悲しみは深すぎる。

 でも母は前を向こう。出来る限りの手を打とう。気持ちを学校に訴える、現状を塾に訴える。考えられるいろんな手を打って助けを呼ぼう。

 福田母はこう言った。
「私は息子にこう言ってたの。『辛いね、辛いね、でも絶対、大丈夫。根拠ないけど大丈夫』って。今、思えば本当に根拠はなかったけど『大丈夫』っておまじないのようにつぶやいたてたわ。でも意外とこれが効いたかも。自己暗示?」

 受験は辛い。でも「大丈夫」って信じたものは強くなる。これだけは間違いないと私は思う。


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 巷ではモンスター親、略してモン親というのが大流行しているらしい。

 新聞紙上で拾っても給食費を払わない親やら、子どもがひとつのおもちゃを取り合ってケンカになるので、そんなおもちゃを幼稚園に置かないで欲しいと真顔で言う親やら、自分の子どもが怪我をして休んだら怪我をさせた子供も休ませろと要求する親やら、今年は桜の花が美しくない、中学校の教育がおかしいからだと言う親まで出るらしい(毎日新聞より引用)。

 日頃、学校さまの面談(別名お白洲)では担任さまの前で親指姫ほどの大きさでひたすら「申し訳ねーこってす、お奉行様、オラに寛大なご慈悲をおねげーしますだ!」と消え入りそうな声で訴えるアタクシには「うらやましい」ほどの暴れぶりである。

「そんなヤツいるか、普通? よっぽど特別な親じゃね?」と知り合いの先生に聞いてみる。

 大変綺麗で設備も整ったどちらかと言えば大人しい子が多いという印象の中堅私立中学の教師であるその先生はこともなげにこうおっしゃった。

「いますよ、いっぱい」

 ええーー? だって私立でしょう? 私立は学校に下手に逆らうと放校処分、モン親は公立の特許ではないんかい?(だからアタクシは言いたいことも言えない親指姫なんだぞー!)

「そんなんに私立も公立もないんですよ、今や。さっきもそういう親と戦って来たところです」

 先生は語る。

「今の親はね、そもそも学校を旅行会社かなんかと勘違いしてるんですよ。旅行会社がパッケージを組んでいるでしょう? 『湯けむり温泉カニ食べ放題、お土産付きでナントお値段9800円ぽっきり!』なんていうアレ、その商品パッケージと同じで学校を教育パッケージと思っているんじゃないですかね?

 PL法が出来てから、この傾向に拍車がかかったように感じるんですよ。

 私立は特に教育目標を具体的に掲げているから、そこから少しでもずれて我が子に不利になるようなことは許せないんでしょうね。「カニ食べ放題って謳っているのにカニの質が思ったようなものじゃない!」っていう感覚ですかね?

 高い金出してるんだから元以上のものは当然提供してもらうっていう前提で来ている。

 少し前に麻疹が流行ったでしょう ?そのときに『学校は生徒全員に抗体検査をやらせるべきだ』と猛抗議をしてきた親がいます。やらないのは無責任だと。

 学校が子どもたちへの危険を排除していくのは当然で教師はプロなんだからそういうことに気が付くのは当然の職務だと言うわけです。すべてにおいてちょっとでも我が子に危険が起こるのはいけないってことが根底にあるみたいで。

 結果ですか? 全員に『なるべく検査をしましょう』ってお手紙を出して、我々教師は全員抗体検査をするってことで幕引きです。自己責任なんてことを言えば話が長引くからです。もうそういうことは日常茶飯事ですね」

 尚も先生は淡々と語られる。

「最近多いのは『何でもかんでも教師頼みの親』ですね。人生相談か? って思いますよ。

 最初はね、子どものことで相談にみえるんですよ。子どものエネルギーレベルが低くなって困るみたいな相談です。食欲がなく元気がないみたいな相談ですね。

 そのうちに実はそれは嫁姑問題が根っこにあって、そもそも夫がしっかりしないからこうなるのであって私は家を出たいが、これは離婚すべきだろうか? って内容に変わっちゃいますから。今、すごく急増してるのが夫のDVですね、最初は子どもが父親からやられているってことの相談ですが、その内に実は私にもってことになる。

 同時に経済的問題もすごく多いです。こういう感じで子どもとは直接関係ない問題を相談されるんですね。お母さんたちに行き場がないのかなぁと同情してますが・・・」

 今や教師は各家庭のカウンセラーも兼ねるのか!?

「でもね、基本的に教師は人から相談されるのが大好きなんです。だからほっとけない。
カウンセラー紹介したり大忙しです」

「モン親に関しても『コイツふざけんなよ!』と思いながらもね、よくよくそのクレームを聞いていると確かにそうだよなと思うことも多い。だから聞いて聞いて全部聞いて、なんとか解決しようと努力するんですよね。

 会社でクレームこそ実はビジネスチャンスってよく言われますが、学校も同じです。

『授業中騒がしい!』ってクレーム多いんですが、担任が入ったり、五月蝿い生徒を隔離したりあらゆることをしますが、五月蝿い生徒にはその子なりの理由があるんで、その内面を解決しない限り無理なわけで瞬時には効果は出ないんですよ。

 でもね、どうにか目に見える形で対処しようと努力して、少しでも効果が出ると保護者が感謝してくれるんですよね『真剣に対応してくれた』って。学校に文句をつける親は確かに煙たい存在に思えなくもないですが、そういう親は基本的に熱いんですよね、教育や学校に対して。

 だからこそ、真剣に対応しないといけない、学校を良くしていかなくちゃいけないって思いますね。

 それで、一見『モン親』だとこちらが構えていた親御さんから『先生は本当によくしてくださった。年末にクラスで一席設けるから』って言われたら『報われた』って涙が出るほど嬉しいですよ。やっぱり教師も人間だから、認められるってホントに嬉しいんですよ」

 親指姫(アタクシざます)は考える。

「学校さまにはなんも文句はね~。しっかし我が子に売るほど文句があるのじゃ! 学校さまも我が子に口を酸っぱくして言って聞かしてくれまいか?」

 そもそもこんな家庭でやるべきこともやらずして学校に押し付けようとするアタクシは実にモン親予備軍なわけで、しかも実際に自宅に電話がかかり言われたら言われたで「ったくよぉ~提出物を出さないからってアタシのせいかい!?」と逆切れするような顛末数回。

 始末におえないっていうのは、実はアタクシかもしれない。ごめんね、我が子の学校の先生さま。


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 子どもの受験に親子面接なんつーもんがあったりします。

「面接は参考程度です」といくら学校様から言われようとも、母は「どんな参考なんですかぁ?」って涙目になっちゃうというもんです。子どもが実力不足で勝手に落っこって来るならまだしも、親のせいで行きたい学校にも行かれなかったなんてなった暁にゃ泣くに泣けませんから、親の緊張もピークに達するというものです。
 
 ある名門小学校受験では父親が舞い上がってしまい母娘の不評を買っておりました。
「お嬢様、昨日、骨折なさったそうですが、お父様、それをお聞きになってどう思われました?」

 父親は裏返った声でこう言ったそうです。
「明日、面接なのにどーすんだ!? って思いました・・・」

 妻が合格発表まで口をきいてくれなかったとぼやいておられましたが、結果が合格だったので離婚にならずに本当に良かったです。

 アタクシも中学受験の親子面接に挑んだことがございます。
 シミュレーションは事前にしておりますが、やはり本番は本番。緊張感は隠せません。

 アタクシは普通に答えたつもりですが、娘から「笑いを取りに行くな!」と怒られましたので、やはり親にとっては辛い儀式であると思います。

 よくある質問に「ご家庭の教育方針」なんてもんがございます。これは中学受験の願書にも非常にシバシバ記入を求められることがある模様です。

 かしこまって記入しなければならないものですが、アタクシのようにいい加減に生きている者にとっては、これは正直、ホントに迷惑、いやヒジョーに答えに窮する質問なのでございます。

「教育方針」

 改まって考えるに、なーんも浮かばないわけです。

 さすがにこの歳ですから「よそ行き」としてはいくらでもペラペラ答えられますが「オメ~、ホントにそうやって育ててんだろーな?」って良心の声に追及されてしまうと口篭ってしまうアタクシがここにいるという、何とも人の親として如何なものよ? と思う次第。

 アタクシ、おもろいので試しに知り合いの編集者やらデザイナーやらに聞いて回りました。

「お宅の教育方針はどーゆーの?」

 彼らは基本的に常識とか場の空気とか、そんなん気にしてらんないという職業ですので一発で答えて来ます。

「家? 『飯は炊け』」

 なんじゃ、そりゃ? ってのけ反りますから。

 忙しいものですから子どもが一人で飯を炊いてくれたら、もうホントに助かるわけです。食事をイチイチ親が用意せずとも「自分でどーにかしてくれや」っていう実に見事な教育方針。

「飯さえとりあえず食ってりゃ、いいだろう」って、もう実にシンプルな子育てなわけです。

彼女はこう言います。

「聞いて! 家の子、ご飯が炊けんの。ホントにもうこれだけで褒めちゃう♪」

 あるエディターさんは教育方針をこう言います。

「テメーで考えろ!」

 子ども自身が自分で考えて自分で納得して自分で進路を決めていけという有り難い教えなわけです。

「俺はね、あーしろ、こーしろなんて一回も子どもに指図したことはないから」と豪語なさいます。アタクシ、底意地が大変およろしい性格ですので、実際に彼のお子さんに聞いてみました。

「どーよ? おやぢの子育て?」

「う~ん。基本的に家に居ないっすから、家の親父は・・・」

そりゃ、テメ~で何でも考えなきゃいかんってなもんです。

 またまた、ある編集者はこう言います。

「人生楽しめ!」

ほーほー。まあ、そりゃそーだわな。人生は楽しむためにあるんザマス。大変結構な教育方針でありんす。で、なんでそんなに結構な教育方針がありながら、子どもが各種検定試験に落ちるたびに火を噴いてお怒りになるんで?

 アタクシはそういうところに人間の心理の奥深さを堪能するわけでございます。

 へっ?  アタクシざますか?

「テキトーに生きろ!」

 アタクシ、ギョーカイ人のように非道ではございませんから極めて常識を重んじておるのでございます。よって、この裏には藍より青い、深い立派な教えが隠されておる。

 すなわちテキトーというのは「ある条件・目的・要求などにふさわしいこと、かなっていること、そのさま。程度がほどよいこと、そのさま(大辞泉より)」なのであります。

 しっかし、現実はどこをどう間違えておるのか「やり方などがいい加減であること、そのさま(大辞泉より)」に傾倒しておる始末。人生思うようにはなりません。

  どうでしょう ?皆様も一度、真面目に「我が家の教育方針」なるものを考えてみるというのは。願書用に書くそれではなく、本音の本音の教育方針。

 この心の奥底に隠されている本音の部分が言葉に出来たならば、おのずと子どもに無理難題を吹きかけることもなく、我が身の丈に合った理想的教育方針というものが実感できるように思うのです。

 ある女性社長は「我が家の教育方針」としてこう言いました。

「(学校を)休んじゃダメ!」・・・「アタシ(女性社長)が子どもの昼飯を作るのはめんどくさ!」というのが理由です。だから彼女は子どもが学校に行きさえすれば例え成績がどうであろうが猛烈に褒めます。おかげで心身共に丈夫な子どもだとかで満足してるそうでございます。

「本音で育てる」。

 結構、大事なことなんじゃないかと思います。


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 昨日(5月17日)行なわれました東京国際フォーラムでの「鳥居りんこ講演会」に
いらしてくださった皆さま、本当にありがとうございました!

 皆さまの熱気がこちらにもヒシヒシと伝わって参りました。

 希望者の方に講演CDをベネッセさんが無料配布されるそうですね。

 そのために「カメラ4台で抜きます」って言われていたんですが、アタクシ、ほれ、何の小道具もないじゃないですか。OHPもいらない、パワーポイントも使わない、ホワイトボードは邪魔、マイク一本くださいっていう「ええーーー?それでいいんですか?」っていうカメラマンさんやら映像担当さんの「オマエの顔だけ撮るんかい! つまらん!」って顔をモロ無視してたんですが、これは正直、ダメでしたね。

 (映像担当のプロデューサーさんに「韓国行って整形したいから、とりあえず1000万くれ!」と言って、ものすごーく呆れられていましたから。博報堂の部長さんに至っては黙り込まれました・・・。)

 ずっと同じようにライトが当たっているので、すごく眩しいんです。皆さんから見て右のライトがきつくて、正面向けないんですよね。でも、皆さんのお顔はすごくよく見えました。お父さんが予想以上に多かったのに驚きました。

 ベネッセさんから事前に「他の先生方は講演会用のレジュメを作っているのだからして
オマエも作らんかい!」という愛あるご指示をたまわりまして、作ったはいいんですが
これが写真にありますような、超簡単なもの。他の先生方のを見せていただいたら資料集みたいになっているので驚きました。

 すまんのぉ、こんなんで・・・。

 台本をカッチリ組んでらっしゃる演者の先生もいらして、スタッフが台本を辿っているのを目にして「おおーーー!!! テレビ局みたいだ!」と変なところに感心してしまいました。裏舞台を見るのも楽しいものです。

 森上先生ともお久しぶりにペラペラしゃべっておりました。先生はいつお会いしてもニコニコとされていて大人の余裕を感じさせる方です。

 日高さん(タッチの南ちゃん)はものすごく声の通る方で聞き惚れます。控え室で少しお話させていただいていたんですが、あったかくて素敵な方でした。

 音声さんは森上先生の声のときにボリューム上げて、日高さんのときに下げてみたいな調整を行なっていらしたそうで、裏方さんには裏方さんのご苦労があられるんだなって思いました。

 これだけの規模のフェアをやるとなると1社ではなく、幹事会社だけでも数社に上ります。

 スタッフの数もすごかったです。多分、ドレスコードがあって黒っぽいスーツだと思うのですが、皆さん、インカムやらトランシーバーやらを付けていてカッコ良かったです。

 せっかくフェアに来てくださってる子どもたちには、こういう仕事もあるんだよ~、いろんな人たちが力を合わせてイベントをやっているんだねってことがわかると、もっと社会体験になってよかったかもしれないですね。

 それにしても、すごい来場者の数でしたね~。人気校には待っている方々の人垣が出来ていましたし。

 こういう進学フェアみたいな催しで学校の雰囲気を感じていただき、気になる学校があったら是非、実際に行ってみてくださいね。

 昨日は、最後の講演者だったので会場締め切り時間があって皆さんとじっくりお話する時間が持てなかったので残念でした。
 質疑応答も時間がなくなってカットしてしまったので、ごめんなさい。

 皆さんから寄せられておりますご質問はベネッセのサイト「進路&進学ナビ」でお答えしますので、またURLなどが決まりましたらお知らせ致します。

 さて、今週末24日は関東学院大学での横三フェスタが予定されています。神奈川受験お考えの皆さん、DEEPな話で盛り上がりましょう。

 ここにはアタクシ、一日いますので、たっぷりお話しましょうね。学研イケメン編集長も来る予定です。

 東京国際フォーラムとはまた違ったお話ができると嬉しいなと思います。

 講演のときにも申しましたが、6年母、笑顔の春を目指そうね。


ベネッセ進学フェア2009 鳥居りんこ 講演会資料


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1 中学受験は新興宗教

2 より良い子育てとは?

3 頭良し子を育てる3種の神器

4 私立ってどんなところ?

5 どうやって我が子に合った学校を探すのか?

6 中学受験は結婚と同じ

7 中学受験が何故こんなに苦しいのか?に対する解決法

8 最後の蜜月

9 泣ける場所を求めて

10 質疑応答








鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話


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 「深海魚」と「高級魚」あなたどちらがお好みですか?
 なるほど、なるほど、あなた「高級」のほうを選ばれる。うんうん、深海魚はなんかグロテスクなイメージがあるし、どうせいただくなら高級魚ってことですな?

 では「高偏差値」と「低偏差値」、我が子が取ってくるのはどっちがお好き? おお、あなたは正直なお方だ。迷わず「高偏差値」に手が伸びた。

 つまりまとめると、あなたは「高偏差値」がお好きで、尚且つ「高級魚」がお好みだと、そういうことになる。うんうん、あなたは至極健全な精神の持ち主とお見受けした。

 しかし世の中、そうそう美味しい話はない。これがキツイ。中高一貫校にこれを当てはめると厳しいのだ。

「高偏差値」と「高級魚」の一挙両得を手に出来る層がかなり限られるからだ。

 高偏差値の子どもが行く学校には当然ながら同じようなレベルの天才さん秀才さんが大集結している。その中でなお高級と言えるラインに我が身を持っていくのは相当なる地頭の良さを持つか、努力をし続ける類稀なる精神力を持つかの二者択一しかない。

 私に言わせるとそんな人物は絶滅危惧種、数は少なく貴重な存在であるのだ。
「一挙両得」の美味しいトコ取りという選択はないことはないが、そこらにわんさか落ちているような種類のものではない。簡単ではないということだ。

 ゆえに正直者の私たちは次にこういう思いに至るのだ。

「トップ校の深海魚とドキュン校のトップだったら、どっちがいっすかね?」

 これがバージョン1だとすれば、バージョン2はこうなる。

「ぶっちゃけ低偏差値校って中学受験で行く価値あるんですか?」

 これは笑い話ではなく毎年、私が受ける質問の中で最も多いものなのだ。

 あまりにストレートなご質問。本音爆裂なので嫌いではない。お上品な答えを探すとこうなる。

 「偏差値で選ぶのではなく校風、教育方針、環境などを考慮しつつ我が子に合った学校選びをしましょう」と。大抵の分別あるセンセーはその質問に呆れながらもそうおっしゃる。

 私は当然ながらセンセーではないので、こういう答えを聞くたびに「それがわかんないから聞いとんのじゃ、ボケ!」と口にはしないが、こころの中で密やかに思ったりしているのだ。校風は学校の匂いなので誰かの話に頼るよりも、自分の五感すべてを動員して感じるしかない。我が家と合っているのか、我が子に合っているのかを判断するのは多くの場合、母の五感にかかっているので、それで迷うのだ。

 「低偏差値校って中学受験で行く価値あるんですか?」

 この非常にシバシバされる質問に限っては「人それぞれ」で価値があると判断すれば迷わず行けばいいし、大金出してまでは意味はないと思えば辞めればいいことだと思う。

「低偏差値」で世間体が悪くて校名を周囲に言えないと思うならば個人的には「やめとけ」とは思う。価値観はなかなか変えられないので、そういう思いで子どもを6年間通わせるのは母にとって酷なのだ。やはり選ぶ学校は愛着がある方がないよりは精神衛生上大変およろしいのである。

 一方「トップ校の深海魚とそうでもないところのトップ」という問題は実に深い。

 トップ校はやはり魅力がある。もしうまくそこの波に乗ることができ、無事卒業までこぎつけたならば我が子には"人脈"というオマケがもれなく付いてくる。

 これははっきり言って美味しい。医者が友人なら心強いし弁護士が親友ならこんな無敵な友人もいないだろう。OB人脈だってホイホイあるだろうから、そこには何かと便利な裏があるのではないかと想像をたくましくしてしまうのだ。

 そんな下世話な話でなくとも、トップ校に在籍している子たちの教養レベルはかなり高いので、その中で繰り広げられる会話は高度な学習話から最低なエロい話まで多岐に渡り、実際に話を聞かせてもらうとかなり面白い。その刺激を6年間共に切磋琢磨しながら味わう環境は正直羨ましい。

 しかし、これはあくまで「合えば」の話である。

 当然ながらトップ集団の集まりであるから勉強に関するハードルは滅茶苦茶高い。もし奇跡で引っかかったとしたら、それこそ(母には)悲惨な未来が待っていると覚悟するべきなのだ。

 深海魚の怖さはいろいろある。母にとっては学校からのお呼び出しやら午後6時の学校からのお電話やらで生きた心地もせず、しまいにゃ立ってる電信柱にも頭を下げてるような状態になる。

 ある母から聞いた話によるとその超トップ校のエライさんの部屋には赤いフカフカの絨毯が敷いてあって、そこに行くためには一般の保護者レベルでは知り得ない秘密の通路を通るのだと言う。その母はフカフカ絨毯を踏むたびに、その赤い色が目に毒なのか帰って来た後は必ず我が身からクランベリージュースを出す、いわゆるひとつの膀胱炎になっていた。逆指名がかかるということは、つまりそういうことなのだ。

 しかし、そんなことは本当の怖さではない。

 本当の怖さは我が子が深海の位置にいる自分に甘んじてしまうことにある。

 居心地が良いのは結構なことなのではあるが、深海の怖さはその環境に慣れてしまうことにある。静かな深い暗闇の中では教師のありがたい教えも親の怒声も聞こえない。

 課題をやらずとも屁のカッパ、成績悪くても気にしない。そうなって来ると当然、学校はペナルティを課してくるので、ますます追い詰められて暗い闇の中に潜ってしまう。

 勉強だけが尺度ではない。しかし、学校というところは、特にトップレベルに行けば行くほどその縛りは強く、いくら「家の子は性格がすごいいいのよ!」と叫ぼうが、その評価は点数としては出ないのだ。結果、プライドと自信喪失の狭間で気持ちが落ちてしまう子どもが少なからず存在する。そこが本当に怖いのだ。

「勉強をしてないわけじゃない。でもやってもやっても順位は上がらない」と途方に暮れる母や「どうせやってもこんなショボイんじゃ認められないから始めからやらない」と投げやりになっている子に泣いている母はすごい数でいるのだ。

 あれだけ中学受験をやって来て、数年経って残ったのは劣等感だけという母と話すとやりきれない。劣等感も自己否定感も持たないよりも持ったほうが良いものである。こころに襞(ひだ)があるのは良いことだ。こころに厚みが出る。人には弱い気持ちがあるということがわかることは財産である。そうは思うが現実の母は辛い。

 では「そうでもない学校」のトップはどうなのかといえば、話を聞くとこれがかなり好印象である。まず学校から大事にされる。間違いなく宝物として大事にされる。

 何やかや言っても私立高校にとって出口は死活問題。少しでも名がある大学に実績を作ることが安泰経営には欠かせないからである。

 大事にされるということは良い言葉かけを教師から受けるということで、そこに自尊心のレベルがグーンと上がるしくみがある。この年頃は他人からの褒め言葉が何よりのご馳走になるのだ。自尊心レベルの高騰は更なるパワーを生み出し、そのパワーは更なるやる気を作り出す。正に好循環なのだ。

 この立場にいる子どもは間違いなく文武両道であるか、あるいは文化系クラブで活躍している。つまり調査書に書けることがたくさんある子なのである。特記事項が多いということは学校推薦だろうがAO入試だろうが有利に働き、それを蹴って一般入試に勝負に出たとしても結果を残していける、いわゆる学園の星である。

 そんな微笑ましい未来が待ちうけているのであれば、無理をせずランクを下げてトップに行ける学校を目指そうとなさるご家庭もあるだろう。

 しかし、ここいらが占い師でもない私たちにとっては非常に迷う選択となる。

 レベルを落として余裕こいて入ったはずなのに、その余裕はドコさ行っただ!? と叫ぶ母もこれまた、ものすごい数いる。

「トップ校なら深海だってプライドが残る。世間的にも聞こえがいい。大学推薦だって上位が見向きもしない『残り物に福』ってのがあるでしょう? それなのに、家には何もない!」
 と苛立つ母もまた相当数いるのである。

 どんな学校であろうと努力をしない者にはご褒美は与えられず、トップを取ることは容易ではない。コツコツとやるしかないのだ。しかし、ここが哀しいところなのだが、余程の強い気持ちがない限りは周りは全く勉強とは異質の環境、もっと言えば勉強することは「イタイ子」のやることというレッテルを貼られかねないため、アッと言う間にそういう環境に馴染み、勉強に志が向くどころか二度と浮上はしないだろうということになりかねない。

 つまりどっちに転ぼうが「トップ校の深海魚とそうでもないところのトップ」という問題は実に深く悩ましい。中学に入学した時点ではまったくわからないからだ。

 ギリギリで入ったけれど頑張った子の話もたくさん聞くし、高3の秋まで寝腐っていたけれど、いきなり爆裂して志望する大学にストレートに入ったとか、何にも考えていないように見えたけれど、きちんと自分の将来を考えていてそれに向かって努力するようなったという羨ましいような話も知っている。

とどのつまり本人次第という結論なのである。

これが一番難しい。


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鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話

ピザーラお届け!

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 びっくらこいた。最近の小学校では運動会の昼時に宅配ピザ屋が出現するらしい。

 校門でピザ屋の店員さんが「○○さま、いらっしゃいますか~?」と叫んでいるというのだから驚く。

 運動会は「家族でビニールシートを広げお重を囲む特別な日」という常識に縛られ、
朝も早よからやりなれないことをしたばっかりに帰った頃には疲れきり、
我が家のその日の夕食は宅配ピザになってしまうという、それはそれはご苦労様な歳月を重ねた私。

「考えつかんかった! その手があったか!!」
と思わず膝を打つ。

 素直な感想を述べただけなのに、教えてくれた母たち軍団の集中砲火を浴びた。

「感心してる場合かー!! 大体、そんな考えの女がいるから最近の学校が!」

 そんな湯気立てて怒らんでも・・・。

 この母たち軍団(下の子が小学生の現役母たち)によると世の中はフルスピードで変化しているらしい。

「宅配ピザもひどいけど、もう何でも有りだよ。キャンプ場に持って行くようなテーブルセットは普通だし、いくら学校がダメだって言っても校庭でバーベキューをしてる一家は毎年結構いるしね~」

「家の学校もそうだよ。校庭の端っこはドッグランみたいになってるしさ、タバコだって平気に吸ってるおやぢたち多いよ~」

「そうなのよ、アタシ、役員じゃん? そうすると注意しないといけないんだよね。『お煙草は喫煙所でお願いします』って。そもそも子どもたちの運動会になんで喫煙所があるのかして納得できないのに、それでもそこで吸おうとせずに校庭で平気にふかしてる人っていっぱいいる。しかも女だとバカにしてんのか、役員の言うことも全然聞かないし」

「タバコもひどいけどビールもひどくない? なんで運動会にビールが必要なのか意味わかんないけど、親戚総出なのか一族で酒盛りして盛り上がってる人たちもいるんだよね」

「わかる! 我が子の出番のときだけ『どれ、どれ』って感じで出てきてビデオを必死に回すわけよ、そういうのに限って客席と運動場を分けるためのテープなんか全く無視して自分のベストポジションで撮影するんだよね。もうオマエ、そこはトラックだよって位置!」

「もう親たちのモラルが年々ひどくなってる気がする」

 そうなんだ~。運動会は今やキャンプ場と化しているのか・・・。

 危ないところだった。もう少し遅く生まれていたら、みんながやってるからマッいっか!? という軽い言い訳でこのブームに乗ってしまっていたかもしれない。危ねー、危ねー。

「りんこね、言い訳するなら、まだマシだよ? 少しは罪悪感があるってことじゃん? でも、そういう親たちには罪悪感なんかないからね。先生が思いきりマイクで注意しても、そんなの何処吹く風よ。何とも思ってないよ」

「そう、ホントに深刻なのは注意されてもなぜ注意されたのかが理解出来ない親もいるってことよ。『えー?マロンは家の家族なんですけど、なんで連れて来ちゃいけないんですか?』とか平気で言うもん」

「『犬だからです!』って正面きって言いたいよね」

「酒もタバコも学校だからダメに決まってんだろー! 言わなくても解れ!」

 まあね~、いろんな人がいるって言ったらそれまでだけど、想像するに何が悪いのかを理解しようとしない人たちに「ダメ」って説明しないといけないのは相当しんどい。

 そもそも「説明」など要らないだろう? 「ダメ」なものは「ダメ」なのだ。いちいち理由を付けることではないのである。

 しかしこれにイチイチ詳細な理由を求められてしまうところにも今の学校のキツさがあるのだと思う。

「ホントならさ、こんだけ安いお金で家の出来損ないの子どもたちの面倒をこんなにも長時間みてくださり、おまけに一食200円足らずという破格の料金で昼飯まで食わせてくださる学校さまに感謝しこそすれ、文句を言うなんかとんでもない! ってとこなのに、最近の親は要望が多すぎなんだよね? アタシたちの親世代は『先生さま』の時代だったじゃない? なんでこうなるかな?」

 う~む、確かに確かに。学校への期待度は大きくなるばかりだし、先生への要望は多くなるばかりなんだろう。

「そうだよ。面倒をみてもらっているんだからさ、教師の仕事だから当然だじゃなくて、親たちも先生を支えていかないといけないよね? そういう気持ちがなくなるどころか、教師をすぐにヤリ玉にあげるような風潮が問題な気がするよ」

 う~む。こういう母たちばかりなら先生もやりやすいだろうなぁ。でも残念ながら今や少数派かもしれないのだ。

「ところでりんこさ、あれだけ嫌がってた娘のお弁当生活はどう?」

「ええーー? りんこがお弁当作ってるの? 毎日? 信じられない!」

「まっさかオールチン弁当じゃないでしょうね?」

ウッ。一瞬言葉に詰まるが、私は正直に言う。

「それがさ、母友から懇願されてさ『お願いだから、一品でいいからレディ(アタシの娘)のお弁当に手作りのものを入れてちょうだい!』って、それで渋々・・・」

 母たち軍団が地球外生物を見るように私を見つめ、次の瞬間、一斉にこう言われた。

「りんこー!!(怒)」

 ああ、私は思えば幸せ者である。
「ダメなことはダメ」とキチンと言ってくれる友だちがいる。

 運動会に「ピザーラお届け」をしても、毎日オール冷食弁当でも生きていけないわけじゃない。いけないわけじゃないけれど、やっぱりそれを敢えてやらないんだよという母の生き様が子どもを育てるんだろう。

 私は「ああ、めんどくせー」と「キチンとしなければ」の狭間で今朝も揺れている。


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鳥居りんこの男時・女時、男と女の四方山話

 陰口というのは、どうしてこう小気味いいかね?
 なんつーの?
 脳内アドレナリンが出るっつーか?

 道徳的に言うならば陰口は「よろしくない行い」である。
 よろしくないのであるのだが大体人間の快楽っつーもんは「よろしくない行い」に集中するのだ。 凡人が快楽に走るのは無理からぬところなのである。

 アタシにはこの異様な快楽を求めていた時代が確かにあった。

 当時30代前半で幼児二人を抱えていた専業主婦のアタシは木村さんという存在に日夜悩まされていた。

 近所に住む木村さんは朝は9時から木村さん家の一人息子を我が家に送り込む。その息子はお昼になっても帰らない。無理矢理帰しても1時になると再びやって来て今度は5時まで帰りやがらないという非常にムカつく状態がほぼ当たり前の日常になっていた。

「どうしても鳥居さん家で遊びたいってこの子が言うもので・・・」

 そーかい。アンタの4歳の息子からは「ママが行って来い」って言ってると聞いてるが?

「もうホントにお宅に行きたがるから私も困ってるんだけど、迷惑だったら(息子を)外に出してぇ」

 4歳が外に出ると3歳の家の息子も行きたがるんだよ !アタシはまだ掃除も洗濯もしてないんだよっ! 忙しい私は一緒に外には行けないのっ! アタシに外に出せと言う前にテメ~で息子を閉じ込めとけ!

「いつも悪いわ~」

 悪いと思うなら二度と来るな!!

 しかしである。これらはみんなアタシがお腹の中で反芻する言葉で、それを面と向かって木村さんに言うことはできなかった。

 なんと不条理なことにアタシはノミなのである。ノミの心臓はイザとなると全くといっていいほど役立たず、何も言えずエヘラエヘラと愛想笑いを浮かべるという情けなさ。

 しかしある日ついにアタシは彼女に直接言ってやった! 偉いぞ、アタシ! かましたれ!

「たまには木村さんのお宅で家の子も遊ばせてもらえないかしら?」

 やった! 大ホームランだ!

 木村さんの子が「帰りたくない」と言って我が家の玄関でひっくり返って泣き喚き、その余波でやっと寝かしつけた家の赤子(レディ)も火がついたように泣き出したからアタシはぶち切れた。

 木村さんはこう言ったと記憶している。

「え? (子どもたちが)家に来たら家が汚れちゃう」

 家の子どもはバイキンか!?
 
 意表を突く返事にアタシは言葉を失った。せっかく勇気を出して言ったのにぃ! クソー!!

 当然、アタシは怒り心頭である。

 しかしアタシは常に「ええかっこしぃ」が大好きで人の評価が大変気になりいつもいつも「いい人」でいたかった。だから他の誰かに「木村さんとついでにその子どもは大嫌い」とは言えなかったのだ。

 当然怒りの矛先はダンナに向かう。誰かにぶつけなければとてもじゃないけど居ても立ってもいられないほどイライラしていた。
 アタシは夜中に帰るダンナの横にまとわりつき「木村さんの本日の悪行」を並べ立てては
怒っていた。

 ある夜、いつもどおりの食卓でいつもの話を延々と繰り返す妻にダンナは言った。

 「頼むから木村さんの話をオカズにするのは止めてくれ」

 満員電車に揺られ疲れ果てて夜中に帰って来るダンナには毎夜食事の度に木村さんの話をされるのはたまったもんではなかろう。

 わかった。私も鬼じゃない。そうまで言うなら頼まれたってしてやんねーよっ!

 人様の悪口は家の中に留めておきたかったが、こんな妻の心情も思いやれないようなダンナに何を話しても所詮無理! アタシはアタシの道を行く!
 
 そこでアタシは近所のママ友たちに思い切って話を聞いてもらうことにしたのだ。
 すると出るわ出るわの木村さんの悪口、罵詈雑言。我が意を得たアタシは水を得た魚のごとく生き生きとした。

「よかった。アタシだけじゃなかったんだ!」
 泣くほど嬉しかった。

 しばらくは本当に楽しい日々だった。毎日毎日何処かの家に集まっては「木村さんの昨日の行状」を教え合った。彼女がああ言った、こう言った、ああやった、こうやった、有り得ない、許せない、頭おかしいんじゃない?

 当の本人が登場した途端、何事もなかったかのように別の話題に移るスリルもまたたまらないものだった。

 女にサモワール(お茶会)は必要悪なのだ。

「刺繍」(Mサトラピ著/明石書店)というイラン女性のおしゃべりを綴った本があるが
そこにはこうある。

 「女同士で陰口を叩く、それは心の換気よ」

 陰口を叩かなければやっていけない時期がある。それで団結していく仲間もある。快楽は悪くない。しかしである。快楽は一瞬だ。

 この木村さんを排除することで結束していたグループの蜜月は何年も続かなかった。

 木村さんが引越したからだ。禁断の蜜を舐めた集団は次の蜜を求める。ターゲットが変わるのだ。しかも怖ろしいことに仲間内の蜜を舐めたがる。そうなるとグループの崩壊は時間の問題である。水を得た魚のはずだったアタシには「釜中の魚」になるなんて思いもよらないことだった。

 何度も言うがそれでも陰口は必要悪だ。人は愚痴を吐き出して綺麗な空気を吸い込むのだ。何とか生きていくためにも必要なのだ。しかしである。陰口をオカズにしてはやっぱりいけない。

 誰かの陰口は調理のスパイス程度に抑えておくのが女の付き合いにおいて返り血を浴びない秘訣なのだ。

※「釜中の魚」・・・釜の中で泳いでいる魚がまもなく煮られて死ぬことも知らずに
いること。最悪の事態も知らぬこと。


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心が狭い

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 自慢じゃないがアタシは心が狭い。
 相当狭い。

 アタシは出来れば公立中・高には再生などせずに「頼む、そのまま沈んでいてくれ!」と願ってしまうような「キングオブ心の狭さ」を持つ女なのだ。
 
 わっはっは、悪いか!?
(しっかし現実的には近頃の公立は結構頑張っている学校は頑張っているという事実がある。「安かろう、悪かろう」ってイメージでいたのに、私立にいるこっちが「高かろう、悪かろう」になりかねないのが、ものすごく不満だ!)

 アタシは子育てが順風満帆な母がデー嫌いなわけであるが、中でもいっちゃん嫌いなのが公立順風満帆母なのである。なんせ腹立つ!

 アタシも別に好き好んで嫌いな人種を増やしたいわけではない。わけではないが、しかしである。この心情に至るには公立順風満帆母たちとの相当いろんな軋轢があったからこそなのだ。致し方ない結果論なのだ。

 中学受験を経験された母たちなら「公立母」の口撃は日常茶飯(ちゃめし)ってなほど経験しているであろうから説明するのも「今更」なのであるが、彼女らの拒否反応は尋常じゃないことが多い。

 大抵こう言われる。

「いいわね~、お金持ちで」あるいは「頭がいい子はいいわね~」

 よっぽどのハイソなお宅と日本の未来を託したいほどの頭脳のお子さん(こういう天才集団が確かに存在するから驚くんだが)をお持ちのご家庭は除くとして、ごくごく一般的な中学受験組は受験理由は「お金が余っている」からではないし、肝心な我が子が「頭がいい」わけもない。批判しているお宅たちの方がよほど経済的には困っていないだろうし、頭脳だって良いでしょう。しかし、これを真面目に説明すればするほど話がこんがらがっていく。

「でも土日も塾なんでしょう?夕飯も塾?もう家は(可哀想で)考えられないわ~」
「大変ね~子どもは。遊ぶ間もなく勉強に追いたてられて、遊ぶべきときに遊ばずに、ゆっくり眠るべきときに眠らずにって毎日で将来、心配にならない?」

 大抵の中学受験母は曖昧に笑ってその場を逃げるように去るのである。

 ものすごい信念を持って中学受験に挑める母は少数派なのだ。みんな、どこかで「何かが違う」とか「この道で正しいのだろうか」とか「私は何を求めているのか」との疑問や自責の念で日々揺れ動いている。

 しかもそれは哀しいことに無事に入学しても尚、ずっとついて回る恩讐である。
 子どもはドンドン大きくなり、自分も加速度的に歳をとる。もはや「たら」「れば」など有り得ない段階に来ても、我が子の不安定さに遭遇するたびに不可能な「たら」「れば」を追い求める。

「中学受験をしなければ・・・」
「この学校に入ってなかったら・・・」

 自分自身が選んだ結果なら責任も取れよう、しかし中学受験は公立中学という受け皿を国が用意してくれている中での異端ともいうべき戦いである。

 子どもの意志というよりも親の選択であり、それが我が身の人生に対する選択ではなく、我が子といえど別人格に対する選択であるということに責任を取りきれない怖さを感じるのである。それゆえ、中学に入学した後、もっと言えば恐ろしいことに高校に行ってさえなお、ほんのちょっとした我が子の揺れに母が対応しきれないことがままあるのである。

 コストパフォーマンスを考え始めてしまうと、恐らく中学受験を体験した母たちはほぼ
全員が深いため息をつくのではないだろうか。

「これからの世の中は学歴は関係ない」と言われればそうなのかなぁ?と思い、
「いや高学歴にこしたことはない」と言われればそうだよね~と思い「いやいや、その前に生きる力だろう?」と言われれば確かにね~と頷き、結局何が問題だって、自分自身の確たる信念のなさに思い切り凹んでしまうのだ。

 アタシの顔には公立順風満帆母が「いっちゃん嫌い」ときちんと書いてある。

「寄ってくんじゃねー!」ってオーラもかもし出している。それなのに何故か我が身が敵の陣地にひょっこりうっかり迷い込んで討ち死にすることがあるのだ! なんつー不幸だ。
 敵は迷い子のアタシに思いやり溢れる態度でこうのたまう。

「りんこの家は大変よね? 大丈夫? 家のローンもあるのに子どもを二人とも私立に入れちゃって・・・。老後は大変ね・・・」

 実に興味深い愛情表現ではないか。心配してくれてんのね?

「そうなの、よよよ、同情するなら家の子の学費を半額でいいから払ってくれまいか?」

 そう言ったら喜んで「任せとけ!」とでも言ってくれるんだろうか?

 敵は満面の笑みでこう言う。

「家はさ私立に行かせるなんてお宅みたいな余裕はないから当然公立だったけど、なんかコストパフォーマンスがよかったっつーかさ、うん、まあ国立(大学)に行ってくれたしね、自宅から通えるし助かったわよ」

「まあ国立?」「まあ、国立」って何?おい、まだ何か言ってるよ。話、長すぎ! このオバサン! アタシはいい加減、話を打ち切るタイミングを計る。

「はいはい、そーでしょう、そーでしょうとも。中高と部活三昧でサッカーにひたすら燃えまくった3年&3年を過ごしたんだっけ? 仲間もたくさんいて? これぞ青春? お金もかからず? そりゃよかったね~。はい、さいなら」

 アタシは実は心が広いのでは? と錯覚を起こすほど「よかったね~」と言ったさね。我が身の傷を覆い隠しながらも精一杯、祝意を伝えたがね。

 こっちとら成績不振により部活停止、金はドブにドンドン流しましたけど、そんな可哀想な(可哀想なのはあくまで子どもじゃなくて母であるアタシだよ!)アタシに言うか!?
 戦国時代なら刀を抜いてもいいくらいの仕打ちじゃないか?

 そうかと思うと敵がひょっこり偶然を装いながら刺客のごとくいきなり襲って来ることもあるのだ。うかうか寝ていられないのである。

 朝一番のピンポンに、まだ寝癖髪のアタシは機嫌が悪い。敵は相談と称してこう言った。
「家は公立だったからAO対策は予備校にお任せで、やっぱりそれなりにお金もかかって大変だったんだけどさ、りんこのとこは二人とも中高私立だからいいわよね? やっぱり私立は面倒見が違うでしょう? 羨ましいわ~」

 ありがとよ~。気を遣って羨ましがってくれるんかい・・・。すまないね~。
「でも家はさ~、学校はいい学校だと思うけど肝心なご本人様たちがね・・・だからさ、聞かないで」としょんぼりとアタシは応える。

 すると敵は生き生きとこう言うのだ。
「またまた!いいのよ、謙遜しなくて!」
 謙遜してねっつーの・・・。で、何? 相談って。
「そうそう、肝心なこと忘れてた!  相談っていうのは早稲田(大学)と慶応(大学)だったらどっちがいいか?ってことなの。
 実はね家、AOで両方受かっちゃって子どもは慶応って言うんだけど、あたしは早稲田も捨て難いかな~? なんて思うわけ。ねえ、りんこだったらどっちがいいと思う?」

 ケッ、結局、自慢かい!?
 片方捨てるくらいなら拾いに行くからくれ! とも言えず「どっちでもいんじゃね?」と悪態つくのが精一杯。わざわざ朝からピンポン鳴らして来た用事はそれかい!?

 家のような「目指せ進級!」だとか「頼む、卒業だけはナントカ!」って家に相談って。

 戦国時代なら刀を抜いてもいいくらいの仕打ちじゃないか?

 アタシは公立母になんの恨みもないのではあるが、こういう一部の順風満帆母が嫌いなのである。なんか人を思い切り持ち上げといてドーンと落とすみたいなやり口が気に入らないのである。

「いやね~? ひがみっぽい人間は」ってか? ほっとけ!


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「痩せたい~」と言う女と「家の子出来が悪くて悪くてこのままじゃ将来が心配だわ~」という女。
 信用出来ません。

「痩せたい女」を目にするたびにアタシは素直にこう言います。
「太ってないやん!」
 行間に「この女、アタシにケンカ売っとんのか!?」との怨念を込めてます。

「痩せたい女」はこう言いますね。
「そんなことないわよ。もうこの腹でしょ? はっきり言ってヤバイ。二の腕なんかぷよぷよでノースリーブは世間様のご迷惑だから着れないのよ」
 とご丁寧にも二の腕のぷよぷよ部分だとおっしゃる箇所をつまんでらっしゃる。

 それはですね、アタシに言わせれば肉ではなく皮! 重力と歴史によってやむ得ず落っこってきちゃった皮です。無理矢理、肉の仲間にされても迷惑千万。

 こんな女が実に多くて嘆かわしい。体脂肪率30%を越えて初めて「痩せたい」と言ってくれと声を大にしたいです。ホントに痩せなければならない女は気軽に「痩せたい~」なんて右肩上がりの声で言ったりしません、つーか軽々しく言えませんのじゃ。

 そんなアタシに友人の筋肉大好き女がこうのたまいました。
「あのさ、りんこが目指す地点と皆が目指す地点は違うわけよ。アンタが別にいいじゃーんって許す低い基準には耐えられない女もいっぱいいるのさ。自分が理想とする地点に遠かったら、そりゃ『ヤバイ!』ってことになるだろうし、やっぱ女はいくつになっても
9号が入る体でいたいのさ」

 9号? なんのこってす? エロ~すんまへんなぁ、とウエストゴム女(アタシ)はスゴスゴと引き返すしかないわけです。基準が違うと言われりゃ、それまでですから。

 同じように「家の子出来が悪いの」って言う発言。これも話半分5割引ですね。
 調子こいて「そーなのぉ? お宅も? 家もよぉ!」なんて喜んだりしちゃいけません。
 アタシ、素直な無垢な女を目指しておるもんですから、この手の罠には丁寧に引っかかっていきます。

 ある女と話していたときです。お互い同じようなランクとされている中学に子どもを入れておりました。彼女があんまりにも「息子の出来が悪い。だらしないし、提出物も出さないし先生からのお呼び出しもしょっちゅう」だとこぼすものですから、アタシは尻尾を振って喜んだものです。
 ええ、アタシ、夫婦の修羅場話と子どもの出来が悪いって話は二大好物でしてついつい首を突っ込んでいくんですよね。

 そんなに悪いんだぁ! 仲間かなぁ? 仲間だといいなぁ、いやいや、仲間どころか尊敬できる先輩だったりするともっといいなぁっていう期待感で胸は一杯ですね。彼女とは仲良くせねば! と気分良く帰るわけです。

 で、数日経ち、偶然、彼女の息子さんと同じ学校に通わせている別の知り合いに会います。
 3人とも共通の知人ですからアタシはこう振ります。
「なんかさ、彼女の息子も落ちこぼれて大変なんだって」
 知り合いはキョトンとしてこう言いました。
「特進クラスなのに落ちこぼれのわけないじゃん! こないだだって英語のコンテスト出場者に選ばれたくらいよ」

 アタシはこう思うわけです。
「ああ、またやってもーた・・・」
 彼女は別に嘘つきではないんですね。正直に彼女のレベルからみたら現状の息子は許せない位置にいるのでしょう。提出物も出せないものがあったのでしょう。授業態度が悪くて先生に呼ばれたこともあったのかもしれません。

 学年順位1番を狙っていたのに意に反して2番だったのかもしれません。1番でも2番でも変わらんだろーがよっ! ってムッときた母。仲間です。でもムッときたところで彼女には彼女の基準があるのですから、どうしようもありません。

 中学・高校受験を経験された母にはわかっていただけるかもしれませんが、受験勉強中に「家の子、ホントにダメで」って愚痴をおっしゃる母が8割強おられます(りんこ調べ)。

 アタシ、真面目に聞きますから「そうなんだ~。ダメなんだ~。困ったね」と相槌を打つんですよね。で、よくよく聞いてみたりすると平均偏差値65とか平気で抜かしたりするんですよ。あのぉ? 殴っていいですか~って思ったりします。
大 体70前後が上限と言われている偏差値で65なんて一般人からすると雲の上なんですが、やはり線を引く箇所が各ご家庭によって明白に違うものですから、本気でダメだと思っている母には「伸びないわ、ダメだわ」ってことになりがちなんですね。

 このように人は哀しいかな、自分で勝手にいろんな線をひっぱって、それが結構もつれたりするもんですから、がんじがらめになって動けないってことが往々にしてある。

 精神科医の町沢静夫さんのお説(「なぜ『いい人』は心を病むのか」PHP研究所)によると「日本人の平均値の法則」っていうものがあるらしいです。自分のことを悪く言って相手をほめることが徳の高い行為だとされるのが日本の文化であり、平均値より上に行くとたたかれるので、目立たないように注意して極力平均値近くにいようとするのが日本人の性向なんだそうです。

 これは老若男女を問わずありますよね。いわゆる「出る杭は打たれる」とか「村八分理論」ってヤツなんでしょうね。

 「愚妻が」とか「家のボンクラ亭主が」とか(アッ、これは本気でそう思ってるかもしれませんが)謙遜を美徳としている文化なので自分を謙って(へりくだって)表現すべきだと我が国の風土が長年に渡って調教しているようなものです。

 これがご挨拶の範囲であれば何の問題もなく事は丸く収まるのでいいんです。これはこれで有りです。しかし、やっかいなのは「平均」という見えるような見えないようなモノに縛られすぎると身動きが取れなくなるということにあります。

「平均年収」ですとか「平均年齢」ですとか「平均貯蓄額」ですとか「平均身長」ですとか、世の中ありとあらゆるものに「平均」という数値が表されます。どれもこれも、そんなに突出しなくてもいいから、平均のチョイ上あたりが「丁度よろしいおすえ」という庶民の願いがそこにあるんですよね。

 子どもにとって一番身近なのは「平均点」でしょうか。まあ、子どもによっては平均点よりも赤点ラインのほうがより愛着が湧く子もいるかもしれませんが。
 これによって母ちゃんの機嫌が上がったり下がったりするんですから予断を許さないものではあるはずです。

 考えてみれば、そんなちっちゃい数字に一喜一憂したって1銭の得にもならないってことはわかってはいるんですが「平均」が気になる母にとっては試験明けの気分は余りおよろしくないものなのでしょう。
 願わくば日本標準値である「平均」なんか気にせずに、出る杭は打たれる、出すぎた杭は打たれないって程の胆の大きさを我が身につけたいものですが、これが難しい。

 今日もアタシ、身勝手に引いた自身の線引きで息苦しいのであります。


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 いかん、またやっちまった。酒が入ってたから余計、饒舌になっちまったのがいけなかったな。アタクシごときの分際で先生さまと直接お話をしようなどと百年早い話だった。

 大体だ、子どもの学校の先生には何はなくとも「いつもいつもご迷惑をおかけして」から始まって、その次に「申し訳ございません」と深々と頭を下げて、即行退散しないといけないんだった。先生と見るや、電信柱にでも頭を下げるのが、あまり成績のおよろしくない&素行もおよろしいとはとても言えない生徒の母としての鉄則であるのに、掟をつい破ってしまったのだ。
 
 娘の学校には金がかかって迷惑なことに(訂正、いろいろやってくださってありがたいことに)海外ホームステイを伴った修学旅行がある。母としては、遠く離れた外国で娘がどのように過ごしていたのかを先生さまに聞いてみたい!  という欲求があるもので、修学旅行が終わった段階でクラス懇親会を開いていただいたのである。

 懇親会の席上、隣同士になった先生さまとアタクシ。まあ、何か話をしないことには間が持たない。

 アタクシは言った。

「先生、事前に旅行会社に出したホームステイアンケートあるじゃないですか? 家の娘は
そのアンケートの『子どもは好きですか?』の欄の『好きじゃない!』にグリグリと丸を
付けていたんですよ。
 
 逆に『ペットは好きですか?』の欄には『大好き!』に丸を付けてたんですね。
去年の先輩の話なんですが、その先輩自身がステイ先の3歳児のペットになってしまい、やれ「馬になれ!」だとか「犬になれ!」だとかの無理難題を突きつけられノイローゼ状態に追い込まれたそうなんです。
 
 しかも3歳児の方が英語のボキャブラリーは断然上で、彼女は思い切り英語アレルギーになって帰ってきたらしいんですが、そんな話を豊富に聞かされたものですから、娘は行く前からすっかり怖気付いて、ペットなら会話も世界共通だと踏んで、アンケートにそんな回答をしたみたいなんです。

 でも、結果、蓋を開けてみれば、あら大変。ペットなし、幼児だらけの家でおまけに赤ん坊までいたらしいんです。あれは何のためのアンケートだったんですかね?
勘ぐるに『コイツ、子ども好きじゃないんだったら、子どもと一緒にさせて慣れさせてやれ!』という温かい学校さまの思し召しでしょうか?」

 言っておくが、アタクシは酒が入ってはいるが真剣に聞いている。

 先生さまは事も無げにこうおっしゃった。

「いや、あれは単にアレルギーがあるかを聞きたいだけで、アレルギー欄以外は何も見てないと思いますよ」

 はぁ?  じゃあ、何故書かす!

 先生さまは憮然としているアタクシに向かって、こうおっしゃった。

「じゃあ、鳥居さんはステイ先にはどんなご家庭が良かったんですか?」

 アタクシは正直者なので、先生さまにこう言ったのだ。

「そりゃ、先生。歳は16,7のブロンド、青い目のイケメンナイスボーイがいる家で、ひと目会ったその瞬間から恋の火花が飛び散ってなんてことがあったら、もう英語の成績なんて急上昇じゃないですか? 英語が出来るようになるのは、それが一番手っ取り早く確実だって聞くものですから!」

 先生さま、女子校の教師さまであられる。目をひんむいてアタクシにこうおっしゃった。

「鳥居さん! そんなことを考えるのはあなたくらいなものです!どのご家庭もそういうことを一番ナーバスに考えて、年頃の少年がいるお宅なんかは真っ先に外すのが当たり前のことなのに、あなたは何を考えているんですか!!(ったく、こんな女が母親やってるんだから嘆かわしい)」
 
生徒のように、この大人の女であるアタクシめが怒られた。
 
 なんだよー、これが語学上達の一番の早道なんだぞー!!

 ふん、やっぱり教師に必要以上に近付いてはいけないのである。シラフだったら、こんなことは口走らなかったかもしれないのに・・・。酒での失敗がまた増えた。

 結論。やっぱアタクシは先生と名が付く人は苦手である。



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1.    5月17日(日) ベネッセ
(たくさんのご応募ありがとうございました。おかげ様で予約受付終了しました。講演会DVD(無料)ご希望の方、ベネッセまでご請求ください)
 
 http://benesse.jp/fair/
 
「鳥居りんこの講演会です。たくさんの方と直接お目にかかってお話できることを楽しみにしております。会場でフラフラ歩いている、りんこをお見かけになったらお気軽にお声をかけてくださいね」
 
2.5月24日(日) 横須賀三浦私立中学フェスタ
 
http://www.yokosan.jp/
 
「神奈川限定の私立中学フェスタですので、よりDEEPなお話で皆さんと
盛り上がれたら最高です! 神奈川の私立にご興味ある方、是非、お出かけください。楽しみにお待ち申し上げております」




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 ええ、ええ、悪いのはアタシざんす。すべてアタシが悪いんでござんす。あんなに学んだというのに、この学習能力のなさ。我が身ながらホトホト嫌になります。

 時は弥生3月夕暮れ時。近所のスーパーでカートなんぞをぼんやりと押しながら「今夜のおかずは何にしよ!?」なんてアホ面引っさげて歩くほうが悪いんです。
 今日日(きょうび)、弥生3月といえば、あ~た、オバさん社会では「家を出ずれば七人の敵あり」ですよ。周りは敵だらけ。自宅から近くなればなるほど、常に緊張感を維持し、 四方八方に気配りしながら行動すべきときなんです。頭ではわかっていたのに、なんという注意散漫。やっても~た!状態です。

 そうです、各有名塾が受験合格者をチラシ発表していく時期なんですよ、弥生3月。中学受験も高校受験も大抵の大学受験も、既に結果がわかっている時期に当たるのであります。

 さあ、前方からにこやかに微笑むは見覚えのあるオバさんです。「ハテ誰かいな?」と記憶を手繰り寄せ「ゲッ、あれは噂大好き、スピーカーオバさん!?」と思った瞬間はもう遅い。オバさん、いっそうにこやかに近付いて来ます。

 「あら~、お久しぶり~! たこ太ママ元気ぃ?」
 「さっきまでは調子良かったんですが、なんか急に元気じゃなくなったんで速攻帰らせてください!」なんて言えるわけがないんですよ、このシチュエーション。

 「いついかなる時にも顔見知りという名のオバさんには注意されたし!」というこの季節限定のオバさんの掟を一瞬といえども忘れた罰です。頭の中でいくら我が頭をポコポコぶとうとも、もうどうしようもありません。しかも最悪、相手は一筋縄じゃいかないスピーカーオバさんなんですから。

 さあ、近況報告という名の噂話の始まりです。

 「今年はお宅、W受験じゃなかった? 大変だったわね~」

 誰々の家には兄弟が何人いて、今現在何年生だなんてことを記憶しているのもスゴイと思いますが、その情報を瞬時にアウトプット出来るという才能にいつも惚れ惚れしてしまいます。

 「家? 家はホラ、県立だったから仕方ないとは思うんだけどね~、その点、お宅は私立だったからいいわよね~。私立っていいんでしょう? さぞやいいところに受かったんでしょうね? たこ太、どこに行ったの?」

 そんな前振りされて「ここで御座い」なんて言えるかぁ!

 「家? 家はね~、Jしかダメで・・・。残念な結果なんだけど、まあ仕方ないわ、実力だからね・・・」

 Jしかダメで残念!? そーっすか・・・。

 「今、国立待ちだけど多分Jだと思うわ~。まあ家は女の子だからどこでもいいんだけどね。たこ太君は男の子だから、やっぱりどこでもいいってわけいかなかったでしょ? やっぱり男の子は大変よね?」

 はぁ、大変で、おっしゃるとおりです。

 「佐藤さんのところのユウくんは現役で国立H大、加藤さんのところの大ちゃんは今年K大で、武藤さんのところのリカちゃんはA大でね・・・それから後藤さんのところが・・・」

 あの~? この話、いつまで続くんでしょうか・・・?

 「そうそう、レディちゃん(たこ太の妹)はどうしたの? そのまま上に上がれるの? お宅は兄妹二人とも私立に入れているからすごいわよね。お金かかるでしょう? 家なんか、とてもとても・・・」

 はぁ、お金かかって、おっしゃるとおりです。

 このシーズン、受験という戦いが終わったばかりという高揚感があるせいなのか、採り立てもぎ立てというホットニュースだからなのか、このようにありとあらゆる情報を得ようともされ、また同時に忘れかけている人たちの近況まで、聞いてないのにご丁寧に知らせてくれようともされる季節なのであります。しかもそれを行なっているのは当の本人ではなく、その母たちというのが何とも言えません。

 アタシが知り合いと受験結果なるものの話をするのをなるべくならば避けて通りたいと思う理由はこれであります。
 七人の敵は屋外ではなく、実は我が身に居るということを痛感させられるからであります。
 他人の合格結果を耳にしたばかりに、どうしてもその他の誰かと比べてしまい、勝ったの負けたのって一瞬でも思ってしまう我が身が寂しいのであります。学歴世代というものに当たるからなのか、世間の評価はやっぱり気になるし、偏差値という名の数字を頭の中では計算している、我が身はそんな見栄の塊なんだということを思い知らされるということが寂しいのであります。しかも、それが自分ではなく子ども同士の比較ということに改めて気が付かされるのがたまらないのであります。
 この季節はぶれない母でいたいと思う気持ちがどこかに吹っ飛んでいってしまいがちです。

 「進学ではなく進路が大事」
 「大切なことは学校名ではなく、そこで何をやるのか」

 教育関係の先生方が繰り返し、声を大にしておっしゃる言葉です。そのとおり! と強く頷く自分がいとも簡単にいの一番に崩れてしまう。それは偏(ひとえ)に子育ても含めた自分自身の生き方に自信がないからなのかもしれません。

 弥生3月、まだ肌寒い日もあります。そんなこんなでアタシは今日も誰にも会わないように引き篭もって暮らしておるという次第なのです。

「夕飯がショボイと言うなかれ。母は精神の安定を目指し、ぶれない母になるため買い物にはなるべく行かないことにする!」

 この季節がトットと早く終わって春爛漫になって欲しいと思っているのは、実は家の子たちかもしれません。

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オバケット

プロフィール

りんこ

鳥居りんこ・・・1962年生まれ。エッセイスト。
ひょんなことから自前のHPに我が子の中学受験体験談を連載。
後に「偏差値30からの中学受験合格記」として学研より出版。
その他著作として「ノープロブレム答えのない子育て」 「本当に聞きたかったQ&A ぶっちゃけどうよ!?」など。
湘南の漁村に住んでいる。出来の悪い子どもの話と夫婦仲がよろしくない話は三度の飯より好きかも。

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