いままでどれくらい京都に行ったことがあるだろう。学生のころはボーイフレンドがいて、そうだ、私におめんのうどんがおいしいと教えてくれたのは彼だった。社会人になってからは仕事で行くことが多くなって、あんまりあちこち見てまわることもできなくて。京都に行くのに、お寺さんも見られないなんてと、私が不満を言ったから、あの人は連れていってくれたんだ。
冬の京都もいいよなんて言って。宝ヶ池なんて初めて行って、プリンスホテルでお茶を飲んで。嵐山を歩きながらいっぱいいっぱい話をして、中身はちっとも覚えていなかったけど、並んでいっぱい話をして。
そうだ、鴨川、かぐや姫のうただっけ。古いよね。でも京都で学生だったら、あんなふうに鴨川のほとりに腰掛けて、ずっとずっと話したりして、暗くなったらキスなんかして、たのかな。私たち。
京都は、好きだった人とおいしいお料理、風景が街全体が空気が、ロマンチック、ううん浪漫的に包んでくれてた。お土産なんて、買ったことなかった。
でもね、今までで一番楽しかった京都は娘とふたりででかけた京都。いろんな話をして、私の過去と娘の未来に思いを馳せて。ママ、このバッグいいんじゃない、かわいい、さくらんぼ。黒とピンク、ママに似合う。
ママに似合う。誰に言われるよりも嬉しくて、いそいそと買ったバッグを、今では娘もときどき使っている。
