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いままでどれくらい京都に行ったことがあるだろう。学生のころはボーイフレンドがいて、そうだ、私におめんのうどんがおいしいと教えてくれたのは彼だった。社会人になってからは仕事で行くことが多くなって、あんまりあちこち見てまわることもできなくて。京都に行くのに、お寺さんも見られないなんてと、私が不満を言ったから、あの人は連れていってくれたんだ。

冬の京都もいいよなんて言って。宝ヶ池なんて初めて行って、プリンスホテルでお茶を飲んで。嵐山を歩きながらいっぱいいっぱい話をして、中身はちっとも覚えていなかったけど、並んでいっぱい話をして。

そうだ、鴨川、かぐや姫のうただっけ。古いよね。でも京都で学生だったら、あんなふうに鴨川のほとりに腰掛けて、ずっとずっと話したりして、暗くなったらキスなんかして、たのかな。私たち。

京都は、好きだった人とおいしいお料理、風景が街全体が空気が、ロマンチック、ううん浪漫的に包んでくれてた。お土産なんて、買ったことなかった。
でもね、今までで一番楽しかった京都は娘とふたりででかけた京都。いろんな話をして、私の過去と娘の未来に思いを馳せて。ママ、このバッグいいんじゃない、かわいい、さくらんぼ。黒とピンク、ママに似合う。

ママに似合う。誰に言われるよりも嬉しくて、いそいそと買ったバッグを、今では娘もときどき使っている。


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ちょっと私には不似合いな、サマンサタバサのニットハンドバッグは、当たり前だけれど冬仕様で、これを買ったのもおそらくとても寒い日だったと思う。

その店はファッションビルの一角にあって、私はその店の前をただ通り過ぎるだけだったはずだ。でも目が止まってしまった。ハートやらピンクやら、キラキラした感じのお店はどうみても自分向きではなく、娘ならともかく自分のためにここでバッグを買うなんて思ってもみなかった。

でもそれでも出会ってしまうことってある。学生のとき、私は教員免許を取るために(先生になる気はなかったけれど)、自分が出た地元の国立の小学校に教育実習に行った。東京の私立大学からやってきた私は、その地元の国立大学の学生に混じって実習を行ったのだ。

わずか3週間。それが終われば私は東京に戻り、おそらくもう会うこともない人たちとの期間限定のつきあいのはずだった。でも目が止まってしまった、彼に。その彼もまた、今まで自分が出会った人とはまるで違って、そうどうみても自分のタイプではなく、そのあとデートするなんて、そして付き合うなんて思ってもみなかった。

ニットのハンドバッグは予想通り、出番は少なく、冬限定で、今は娘のお気に入りになっている。そしてあの彼は、これまた予想通り、次第に会うこともなくなり、今はどうしているのか、私は知らない。




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バッグを選ぶとき、私には避けて通れないものがある。ひとつは凛とした佇まいを持つそのフォルムと、持つだけで微笑みたくなるようなかわいいモチーフだ。中でもうさぎとくまは私のツボで、このバッグもアニヤの売り場で一目惚れして買ったものだ。

私の名字は満月という意味、なので満月といえばうさぎだろうということで、昔からうさぎが好きだったことと当時担当していた作家さんが、偶然にも雑誌の中で「うさぎ的美人な編集者(どんな美人だ?)」と紹介してくれたことから、なんとなくうさぎのイメージができてしまった。

とはいえ、私のことをうさぎと呼ぶのは、あとにも先にもふたりだけで、そのひとりは、いつもからかって、いや半ばバカにしたようにうさぎ、うさぎと呼んだのだ。もちろん「うさぎって淋しいと死んじゃうのよ」なんて、かわいいことを言えるキャラでもなく、まるっこい体型と大きめの歯が私のイメージだったのだと思う。今でも彼が笑いながら「うさぎさん」と呼ぶ姿が目に浮かぶ。そこには確かに愛おしそうに私を見る彼がいた。

アニヤのバッグはもっぱら袋から出してはそのかわいさに、にこにこしてしまうばかりなのだが、次の夏にはしっかり使おうと思っている。あの彼と過ごした夏を思い出しながら、ぜひ軽井沢にも持っていきたい。



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オーラカイリーはロンドン発のバッグブランドだ。もともとがテキスタイルデザインの会社だったそうで、その独特の色遣いとプリントが特長で、コアなファンも多い。とくに葉っぱのモチーフは有名で、毎シーズン登場する。

私がオーラカイリーにはじめて合ったのは、まだ渋谷のマークシティの地下にショップがあったころで、帰り道その前を通る度に、かわいいなあと思い続けていたのだ。

でも意外に値段が高い。がま口を大きくしたみたいな、ハンドバッグがかわいくて、欲しくてたまらない時期が長く続いたが、値段を見ては諦めた。(とはいってもエルメスなどに比べたら、格段に安いのだが)

冬にちょうどセールになって手に入れてから、会う人会う人に褒められて、また欲しくなって買ったのがこの斜めがけできるショルダーバッグだ。

その頃、私は年下のボーイフレンドがいて、よく一緒に飲みに行った。ちょっと時間が空くとワイン飲もうか日本酒行こうかと、連れだって出かけては、夢の話や学生時代の話をしては、盛り上がった。恋愛とはちょっと違って、親友のような間柄だったから、気持ちも軽くいつも笑っていたように思う。

そんなときにこの斜めがけのバッグはぴったりで、ぎゅうぎゅうになって座るおでんやさんや居酒屋でも重宝した。そして、いつも彼はこのバッグを見ては褒めてくれた。「かわいいね」と。酔っぱらって毎回「かわいいね」と言う彼こそが、実はとってもかわいかったのだ。



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りんごがかわいかったのだ。表は真っ赤なりんごで、裏は半分に切った白いりんごで。しかもバッグの中味は私のラッキーカラーの赤だったから。これを持って歩いたら楽しいだろうなって。どう考えても思い浮かぶシチュエーションはオフの日で。そのせいもあって、なんだか楽しくなって買ったのだ。

その彼はいつも仕事が忙しく、いや彼に負けないくらい私も仕事が忙しく、平日は会うことができなかった。無理をすれば、お気に入りのバーでバーボンの1杯くらい飲むことはできたかもしれなかったけれど、いつもエンドレスの仕事を抱えていたし、そんな時間でも電話はかかってきていたから、いつしか二人の間で会うのは休みの日というルールができあがっていた。

だから休みの日、本当は一日中寝ていたかったり、天気がよければ洗濯をして、ぼーっとして過ごしたりしたかったけれど、彼のために時間を作った。そう無理をして、無理をして、無理をして。私はいつでも機嫌良く、彼に会えたことを喜んで、お気に入りのブランドバッグを持っておしゃれして出かけていった。楽しくなかったわけじゃない。嬉しくなかったわけじゃない。大好きだった彼、大好きだった時間。

でも。疲れた頭を休めるには、疲れた身体を癒すには、私には何にもしない日曜日が必要だった。多分それは彼も同じだったんだと思う。会わない日曜日が初めてできて、そのうち会わない日曜日だらけになって、私たちは静かに別れたのだ。

もし、あのときすっぴんで、どちらかの家で何もせず、うたたねしながら二人で過ごしていたら、お腹が空いたらこんなりんごのバッグを持って買い出しに出かけて、コンビニでアイスクリームを買って歩きながら帰ってこれたら、今も私の隣には彼がいたかもしれない。ねえ、そうだよね、きっとそうだ。



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この何年かの流行りのバッグはバレンシアがにしろ、クロエにしろ、私からみたらちょっとハードな感じで、フリンジや大きなチャームもかわいいと思うけれど、ちょっと私には似合わない。

バッグというのは洋服のコーディネイトに合っているのはもちろん、全体のテイストと、そして自分とのバランスが取れていないと、なんだかとてもちぐはぐになり、野暮ったい印象を与えてしまう。だから何でもかんでもひとつのバッグで通すことなんてできるわけがなく、女にはたくさんのバッグが必要となるのだ。

でも。時にはちょっと自分の雰囲気とは違うけれど、今年風のバッグが必要になるときがある。それは仕事上だったり、気分を変えるためだったり。このCOACHのバッグはそんなひとつだった。多分通常なら手に取ることはない。でも今年らしさをちょっと出したいなあと思って、あえて私らしくないバッグを選んだのだ。だから買ったのは御殿場のプレミアムアウトレット。手頃な価格になっていたのも、私の背を押した。

それは多分男のタイプにも当てはまる。私の好きなタイプはいつも決まっていて、寡黙なちょっとひ弱にも見える男で、愛想のよくない横顔と煙草を吸う仕草にやられてしまう。だけど、そんな男は愛情表現も決まって不器用で、ときどき私は力強いストレートな男に甘えたくなる。私を安心させてくれる男に惚れきることはできなくても、一緒に歩くことはできるのだ。

COACHのバッグは、そんな風に今年らしさを私にくれたが、やっぱり惚れきることができなくて、私は思いついてかわいいチャームをつけてみた。同じブランド、私らしさがプラスされて、バッグは表情を変え始める。そうだ、タイプの男は待つだけじゃなく、私が変えていけばいいんだと、今ごろになって気付いては、苦笑してしまうのも、おかしみである。



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これはイタリア フィレンツェのブラッチャリーニの籐のバッグ。ブラッチャリーニの一番の特徴は、オリジナルに徹している点。デザイン画だけでなく、素材選びから加工においても既成のものを嫌い、すべて初めから作り上げルトスカーナ地方の、職人の技が生きている。

数年前にイタリアを旅行したときに、ふらっと入ったところが、このブラッチャリーニの店で、ちょうだ真夏だったこともあり、このレースのような皮のモチーフのかわいらしさに一目惚れ。もう少し大きなボストン型と迷ったが、このショルダーのほうが軽やかな気がして購入した。ユーロがバカみたいに高いときだったけれど、これは比較的手頃な値段だったと思う。

こんな風に思いもかけぬ出会いがあるから旅は面白い。そういえば、大学時代、女子ばかり4人で旅した北海道で、私たちは嵐に巻き込まれた。確か登別が洪水で、あと何分かで脱出しないと、道が寸断され、陸の孤島になってしまうと聞かされたのだ。そのとき、そこに居合わせた京都の男子大学生二組と一緒に私たちは車に便乗させてもらって脱出した。

それは日常ではあり得ないスリルと興奮に満ちたハプニングで、私たちはたちまち仲良くなったのだ。それから10年、私はその中のひとりと不思議な関係で付き合っていた。東京と京都という距離感が生み出した絶妙なバランスは彼がくれる手紙で、そして時折返す私の返事で結ばれていたのだ。

手紙には間違いなく好きだと書かれていたけれど、あまりに現実味がなく、その言葉は宙を飛んだ。でも。私にとっては大切な友人以上の存在だったことは間違いがない。

そうだ、あの出会いも真夏だった。このバッグと同じように。



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vol.15 Diorの古いバッグ

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この古いDiorのバッグは父が30年以上も前に、ヨーロッパ各国に仕事で行ったときに、祖母にお土産として買ってきたものだ。祖母は喜んで、大切に、それはそれは大切にしまっておいた。もしかしたら大切にし過ぎて、持ってでかけたことも、ほとんどなかったのではないだろうか。

祖母がなくなって、このバッグは母が譲り受けた。母もまた、祖母の形見として大切にして使った。いや大切にし過ぎて、母もまたあまり持ってでかけなかったように思う。

そして、いま、私の手元にこのDiorのバッグはある。三代目の私も、やっぱりこの古いバッグを大切にして、あまり使えないでいる。父の思いもそこにあるように思えるから、何か大事なときに使おうと思ってしまう。

大学生になって初めてつきあった人は、誠実な人で、私たちは同じサークルで出会った。彼は私を大切に思ってくれた。だから私のわがままは何でもきいてくれたのだ。夜に会いたいと言えば、それがどんなに遅い時間でも彼はきてくれたし、あの店のケーキが食べたいと言えば、それがどんなに遠くても彼は買ってきてくれた。

そしてだんだん、その優しさが当たり前に思えて、やがて嘘にも思えて、私のほうから別れを切り出した。あんなに大切にしてくれたのに、いっぱいキスもしてくれたのに。大バカな私は、自分のことばかり優先する、わがままな男のほうが、好きだったのだ、若さゆえに。

大切にすることは簡単なことではない。大きな器がなければ、誰かを何かを大切にすることなんてできないのだ。パイロットになりたいと言っていた彼は、いまどうしているだろう。大空を飛んでいるのだろうか。



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日本人が一番好きなブランドのひとつといえば、ルイ・ヴィトンだ。

あの独特のモノグラムは、もはや定番と言ってもいい。最近ではダミエをはじめマルチカラーも登場し、人気の衰えを知らない。

でも、私はずっとビィトンに興味はなかった。いや、どちらかというとあんまり好きじゃなかった。では、持っていないかといえば、そこそこ持っている。使っていないかと言えば、そこそこ愛用している。いやむしろ旅行に行くときは欠かせない。丈夫だし、汚れが目立たないし、悪くない。

なんだか矛盾しているような話だが、その存在はずっと友だちのままでいる男友だちに似ている。ときどき、祭りだったり旅行だったりに一緒に行くと、ちょっとそのときの気分で、恋人になりそうな瞬間もあるくせして、どうしたって一線は越えられない。「私たち、同じ部屋に寝たって絶対何にも起こらないよね」なんて笑い合って、まるで腐れ縁のように長く付き合う友だちだ。

失恋して酒が飲みたいときは電話して呼び出して、仕事で嫌なことがあれば延々電話もできる彼は、私にとっては当たり前の存在で、大事にするとか慈しむとか考えたこともないのに、誰かに「お似合いだね」とか「付き合っちゃえばいいのに」なんて言われれば、妙に意識して照れたりして。もしかしたら、誰よりも一等大切な存在なのかもしれないのに、お互い口に出してそんなことは言わないのが、ひとつのルールになっている。

だから登場回数もこのバッグは少なくて、でもコロンとした形も大きさも気に入っていて、たまに思い出したように使っている。



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1年のうちの何ヶ月しか持つことができないかごバッグ。でも持つことで、夏を実感できるかごバッグ。そんな出しゃばらない風情のかごバッグが私は好きだ。

もちろん夏限定だから、たくさんは持っていない。出番だって少ないし、洋服だって選ぶ。でもないと寂しいし、夏になった気がしない。そう、例えばかき氷とか、冷やし中華とか。ふふふ、かごバッグってそんな存在なんだ。いいじゃない、それはそれで存在感を示している。

そういえば、夏限定で思い出す彼もいる。初夏に出会って、秋に別れた。それは大学生のころ、教育実習で出会った彼。私の出身は地方の国立大学の附属小学校で、彼はその国立大学に通う学生だった。どういうわけだか話すようになり、そのうち二人で飲みに行くようになり、なんとなく付き合いだした。キスくらいしたかもしれないし、浴衣を着てお祭りに行ったかもしれないその彼との恋は、実習が終わって私が東京に戻ったら、自然と終わりを告げたのだ。

もう顔もよく思い出せない、その彼のことを、夏がくるとふっと思い出すことがある。クリスマスのころ、確か東京に会いに来てくれたのだけれど、私にはもう彼を思う気持ちはなかった。

ごめんねとは言わなかったし、もう会わないとも言わなかったけれど、きっとその雰囲気で彼は感じとったんだと思う。傲慢で嫌な女と思われたとしたら、当時の私には、そのくらいがちょうどよかった。

でも・・・・。彼と会うときかごバッグは持ってなかった。こんなかわいいバンビが付いたかごバッグは、もっと素直な気持ちで向き合った夏の恋にこそ、似合うと思う。



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これは前に紹介したキャスの柄違い。前が花柄だったのに対して、今回はテリア柄。同じ形なのに、イメージは全く違う。実は、この柄のトートが欲しくて、捜していたのだが、なかなか見つからず、仕方なく前の柄を買ったというのが、本当のところ。

それはまるで、好きな彼がいるのに、その彼には彼女がいるらしい噂を聞いて、アプローチしてくれる「嫌い」じゃない彼と付き合ってしまったようなもの。それはそれで、幸せなはずなのに、本当に好きだった彼が、あの子と別れたと聞いたら、いてもたってもいられなくなった、そんな女子の心情に似ている。

まあ、私にもそんな経験はある。でもね、と思う。私自身は想われるよりも想うほうが好きなややこしいヤツではあるけれど、本当は想われることのありがたさに気付いていないだけだったんじゃないだろうか。つまり身近に居て、好意を示してくれる男は、あまりにも冒険がなさ過ぎて、その大切さに気付かないのだ。女はいつだって、刺激的な、悲劇のヒロインもちゃんと仕込まれた恋が好きなのだから。

まあ、そんなわけで、手に入れたこのボックスバッグ。ブルーグレーの色合いも気にいっているが、なかなか普段は持ちづらい。かわいいのと幼いのとは違うから、私の中ではもっぱら、休日の楽しみとして取ってある。とくに、こんな夏には、海辺に持って行くのにも、ちょうどいい。



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このバッグは何年か前に母と長くフランスを旅行して、最後に立ち寄ったパリのエルメス本店で買ったものだ。

何色にしようか迷ったけれど、私には珍しく、ブルージーンを選択。意外にどんなお洋服にも似合って、気に入っている。ただし、ものは入らないので、お休みの日限定ではあるけれど。

そう、このバッグは、優しい空気が似合うのだ。例えばつきあい始めのふたりのように、どこかお互いにぎこちなく、「何着ていこうかな」と迷ったり、「何話そう」と緊張したり、固さが目立つふたりには、このピコタンは似合わない。

たとえば、自然に手がつなげるようになって、何も話さなくても心地良い時間が流れるような、そんなシチュエーションにこそ、このピコタンはふさわしい。いやいや恋人じゃなくても、長くつきあったボーイフレンドとの、ひさしぶりのデートにも、このバッグを持ってでかけよう。

ちょうどタイミングよく何年かぶりに電話があって、ちょっとお茶しない? と、居心地のいいカフェで会った彼は、昔と同じ時計をしていてちょっと嬉しかった。私が知っている彼のままで現れたことが多分私をほっとさせたのだ。その彼が、このピコタンを見て「へえ、なんか意外だけどよく似合ってる」と言った。それは多分、褒め言葉と寂しさの混じった言葉で、私の胸は少しちくんとしたのだけれど。

それでも心のどこかで、変わった私も見てほしかった。もう、とうに大人なんだし、バッグの趣味だって少しずつ変わってきているのだから。あなたの知らない私も、間違いなく今の私であることを。



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どうして買ったのか、あとになるとよくわからないバッグというのもある。このグッチのバッグもそうだ。多分、どこか海外に行ったときに、セールかなんかになっていて、とても安かったので、つい、勢いで買ったのだ。

もちろんマリンテイストは嫌いじゃないし、A4サイズが入る大きさも申し分ない。でも夏にしか使えないし、ちょっとカジュアル過ぎるのも難点。そんな風に思って、ここ何年もこのバッグは出番がなかった。

そう、それはまるで、すごく好きというわけではないのに、恋人がいなかったから、まあなんとなく付き合ってしまった、若いころの恋愛に似ている。

その彼はひとつ年下で、サークルが一緒だった。その頃、私は前の彼と別れて、それほど時間が経っていなくて、人恋しかったんだと思う。「ずっと好きだった」という言葉は、冷えた心を溶かすのには十分で、それで、なんとなく付き合いはじめたのだが、やっぱり私は自分から好きにならないとダメな女で、だから無理して好きになろうと努力したけれど、結局自然消滅みたいになって、つきあって1年で別れてしまった。

けれど、今思うと、アメリカに旅行に行った私のステイ先のホテルに手紙をくれたり、交換日記をしたり、それなりに楽しかったのを思い出す。もっとちゃんと付き合ったら、違う未来が待っていたかもしれないのに。バカだなあ、若いって。

だから、この夏はこのバッグを袋から出して、使おうと思う。たとえばストライプのシャツに合わせて。ああ、そうだ、決めつけなければ、このバッグの活躍の場は広がるかもしれないと思う。



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このバッグを買ったのはもう10年以上前。確か母も連れてアメリカの西海岸に旅行に行った帰りに立ち寄ったハワイで買ったものだ。当時の私はまだ若く、仕事もこれからバリバリと頑張るぞという意識が、このバッグを選ばせたのだろう。細かい仕切りのついたこのPRADAのバッグは、ビジネスバッグと呼ぶにふさわしく、実に機能的にできている。

そう、私は仕事も家庭も両方頑張るほうを選んだのだ。学生時代に付き合っていた彼は、当たり前のように私にこう言ったものだ。「結婚したら、仕事は辞めるんだろ」と。「女の人は結局家庭に入るのが幸せなんだから」とも。

そのとき、私は何と返事をしたのか覚えてはいないけれど、おそらく曖昧な微笑みで、答えをごまかしたのではなかっただろうか。女は結婚したら仕事は辞めるのが当たり前と決めつけた彼と、結局私は結婚することはなく、いやむしろ、そんな時代錯誤なことを平気で口にする彼のことが悲しく、ずいぶんと長いこと心の整理がつかなかった。本当は彼のお嫁さんになりたくて、自分を殺して生きてきたから。

でも私はこのバッグを選んだ。そして、仕事をすることを尊重してくれる男と結婚し、今もこうして仕事をしている。それでも時々、あのとき、専業主婦への道を選んだら、私は今ごろどうしているのだろうと、ぼんやりと思うことがある。そんなぼんやりとした思いも今となれば可愛らしくて、私はこのバッグにくまのチャームをつけたのだ。女の幸せは仕事にもあるのだと、このチャームは語りかけている。



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 鞄が好きだ! というとブランドものが好きなのね。と、鞄=ブランドと解釈されることが多い。それは間違ってはいないが、完璧に正しいというわけでもない。私の持っている鞄のブランドものの割合は、どうだろう、半分くらいだろうか、いや数えたことはないけれど、もっと少ないのではないだろうか。

 鞄好きはブランド好きとは違う。形が好き、素材が好き、佇まいが好き、フォルムの美しさが好きと、好きを並べて選んだら、ブランド鞄に行き着いただけのことで、最初からエルメスだったら何でもいいとか、シャネルの新作なら無条件にというのとは、全然ワケが違うのである。
 
今回のバッグは広島の主婦の方の作った、作家名P'sさんのハンドメイドのバッグだ。家の近くにJAM COVERという主にハンドメイドの作家さんのものを扱うお店があって、そこで出会ったのがはじまり。彼女の書くブログが面白くて、時々のぞいてみていたところ、偶然セールしていたのを買ったのだ。

 色のバランスや、布の合わせ方がバツグンで大切に楽しんで使っている。ちなみに鳥のブローチも下北沢のこれまたハンドメイドを扱うお店のセールで150円になっているのを買ったもの。こうして自分らしくカスタマイズするのも楽しく、鞄好きの自己満足心は満たされている。

 考えてみれば20代のころはバブルの絶頂期で、選ぶ男の条件も「三高」でなくては、とみんなブランド男に走っていた。その中で、どういうわけだか、人間くさくて、夢を語る男ばかり好きになり、時代と逆行していたのが私だった。あのとき、慶応出身、背が高く、商社勤めの彼と結婚していたら、今よりもっと幸せだっただろうか。いやいや、きっと途中で飽きてしまったに違いない。ハンドメイドのような男のほうが、人生はきっとスリリングで、私には合っていたと、そう思う。



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多分、誰かと待ち合わせをして、約束の時間よりも早く着いてしまったのだろう。ふらっと入った銀座のエルメスで、新作として登場したばかりのこのバッグに出会った。

 バッグと言えば、黒か茶かベージュしか持っていない私の目に飛び込んだ、鮮やかな色のバッグ。エルメスらしいオレンジを手にとって、鏡の前で合わせたら、なんだかとても新鮮で、一瞬にして気持ちがパッと華やぐのを感じたのだ。

 私は昔からコンサバティブなくせに、ときどき自分でも驚くほど大胆なことをするときがある。どうして、そんなことをしたのか、あとになると自分でも説明がつかないのだが、どこかでふっとスイッチが入るのだ。

 たとえば、年下の男に恋をするのもそうだ。甘えん坊の私に年下の彼は似合わない。まるで入り組んだパズルと一緒で、途中で絶対に混乱してしまうのだ。頭ではわかっているのに、出会った途端惹かれてしまう。なにやってるんだろう、私。そんなふうに問いかけながら、彼のことを追っている自分がそこにいて、ほとほと呆れるやら、驚くやら。

 でもね、オレンジのバッグは主張が有りすぎて、家に帰ってきてから、ちょっとだけ後悔をした。ならばいっそのこと、私らしくアレンジしてしまおう。こちらの思惑通りに事を運ぶためには、彼とのつきあいだって、先手を取らなくてはダメなのだ。優しい色のチーフを巻いて、後ろから眺めれば、ほら、どんな色のスタイルにも似合うバッグのできあがり。見るからに私にぴったりの相棒に仕上がるのだ。



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 エコバッグが世界中で大ブームを巻き起こしたアニヤハインドマーチ。リボンモチーフのロゴでもおなじみのイギリスのブランドである。私がアニヤのプリントトートのバッグに出会ったのは、もう7、8年も前のことだろうか。ウィットに富んだ、そしてほかにはない写真のモチーフに一目惚れしたのが最初だった。

 このうさぎのプリントトートは、渋谷の西武百貨店のアニヤのお店をふらりとのぞいたときに、偶然出会った。飼っていた我が家のうさぎにそっくりで、思わず手に取り、連れて帰ってきたのを覚えている。

 そして、このバッグを買って気付いたのは、このバッグを持つときは、バッグが主役で洋服は脇役になるということだ。プリントの洋服とは絶対合わない。鮮やかな色とも相性が悪く、茶色か紺色か黒か、とにかくシックな色の地味な装いにこそ映えるのだ。

 それはまるで、よく喋る女と寡黙な男のよう。もしくは陽気な男と物静かな女。一見正反対に見えて、まるで凹と凸とがはまるように、ぴったりと補い合って、唯一無二の存在となりうるのだ。そういえば、私が好きになる男も無口な男が多いのはそのせいか。高校時代にもらった手紙に「君の羨ましいまでの明るさは、僕には永遠に持てないものです」と書いてあった。

 そんなふたりの相性は最高だと信じていたけれど、あのころの私は若すぎて、言葉にしてくれない愛情を理解できずに苦しんだ。そうそう、あの手紙に確か「君はうさぎに似てる」と書いてあったんだ。久しぶりにこのバッグを取り出したら、昔のことが鮮やかに思い出された。



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vol.5 FENDI バケット

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女というのは、どうしてこうも荷物が多いのか。お財布に鍵、携帯電話に化粧品、手帳にハンカチ・・・、気が付けばいつも、お気に入りやら、寂しさやら、不安やらをバッグいっぱいに詰め込んで、いつでも自分らしさを取り出せるよう、用心深く抱え込んでいる。

 それなのに、好きになる男は、いつも身軽で、エアーのチケットだけ握りしめて、ふらりと海外に出かけていく。「どこでも寝られるのが特技なんだ」なんて笑っていうから、いつも私は一緒に連れてってという言葉を飲み込んでしまう。

 あるとき、ポケットから小銭を取り出し、私にカフェラテを買ってくれて、「これからどこかに旅行にでかけようか」とつぶやくように彼が言った。「えっ、それは無理、だって何の用意もしていないもの」すると、私の手元を指さし、「こんなに荷物を持っているのに?」と、少し寂しそうに彼は笑った。

 そうなのだ、いつも大きなバッグを抱えているのに、私は肝心なものを持っていない。それは小さな勇気と、後先構わぬ大胆さ。このふたつを持っていたら、私の人生は確実に変わっていたかもしれないのに。
 
だから、私はバッグを買った。小さくて、お財布と鍵と携帯電話しか入らない、「バケット」という名前のFENDIのバッグ。ストロー素材のデイジー模様がかわいくて、確か、南の島で買ったのだ。

 こんなバッグだけを持って、彼とふらりとどこかに出かけたかった。「必要なものは現地調達でいいじゃない」そういったら、あの笑顔で笑ってくれるかな。 

 もうすぐ、このバッグが似合う夏がくるから、何年かぶりに私は彼の携帯にメールを送ってみようと思う。




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 去年の夏、香港に行った。前回行ったときは仕事で、ほとんど自由時間もなかったので、プライベートで行った今回の旅行を、本当に楽しみにしていた。海外旅行も毎年のように行っていると、だんだん買い物とか、観光とかに必死になることもなくなってくる。

 非日常の空間で、いつもとは違う時間の流れを、ゆっくりと気ままに過ごすことこそが、本当の贅沢だと、この歳になってようやくわかった気がする。

 それでも旅の記念に何かひとつと思って訪れたGUCCIの店で、私はこの犬のチャームに出会った。家で飼っているのがミニチュアダックスで、そのとぼけた表情が愛犬に似ていたのと、ファッション雑誌で見かけたときから、なんとなく欲しいなと思っていたのが重なって、迷わずその「グッチョリ」を手に入れた。

 けれど、困ったことにそのチャームをつけるのにふさわしいバッグがない。まるで、条件だけでつきあい始めて、相性だとか性格だとかわからないまま、本当にこの人が運命の人? と悩み始めるように、そのチャームはゴールドの箱の中に眠ったままになっていた。

 そして、その年の暮れも押し迫った12月。私は再び仕事で香港に向かうことになる。初日からずっと仕事で、自由時間が取れるかわからないスケジュールの中、たった1時間空いた時間。私は迷わずまたGUCCIへと向かった。

 するとあの「グッチョリ」と同じ色のトーンのバッグが、まるで私が来るのを待っていたかのようにSALEにかかって、たったひとつ残っていたのだ。

 コウイウノッテ、ウンメイッテイウノカナ

 東京に帰って、チャームを箱から出してつけてみると、まるで最初からこうなることがわかっていたかのように、ぴったりとそのバッグに収まった。条件から入って、回り道をして、ケンカもして、いつしか条件なんか抜きに好きになって、最初から、出会うことが決まっていたかのように結ばれたふたり。そんな不器用な組み合わせがおかしくて、私は結構このバッグが気に入っている。




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 いまから20年前。私はピンクハウスが好きな女だった。誤解がないように言っておくが、ひらひらふりふりがただ好きだったのではなく、そのブランドのデザイナーにしかできない手の込んだプリント柄や刺繍やロマンチックな雰囲気が好きだったのだ。その頃、私は黒の皮のピンクハウスのトートバッグを持って、出版社に通っていた。シンプルで上品で、使いやすいバッグはみんなにとても褒められた。

 けれど、そのバッグは結局何度目かの引っ越しでなくしてしまい、私の鞄の趣味も、もう少し主張のあるものに変わっていった。

 鞄は女を映し出す鏡のようだと言ったが、当時心底好きだった男も、そのバッグ同様、主張しすぎない寡黙な人だった。そしてその人とも何度目かの春が来るころ、別れてしまい、私の男の趣味も変わっていった。

 それから10年以上の年月が経ち、私は再びそのバッグに巡り逢うことになる。ブランド名は名前を変え、ピンクハウスから、デザイナーの名前を冠していた。新宿の高島屋で、このバッグに出会ったとき、まるで昔の恋人に偶然出逢ったように、懐かしくて照れくさくて、私はまたどうしても、このシンプルなバッグが欲しくてたまらなくなったのだ。

 もちろん昔の恋人に、長い月日が経ったあと、もう一度逢うなんて考えただけでもぞっとする。別れたあとに積み重ねた経験は間違いなくお互いを変えていて、それを巻き戻してもう一度会うことは、あのぶれもなくきっちりとした別れさえも犯してしまうと思うのだ。思い出は冷たく、そして美しく。体温を持たせてはいけない。

 こうしてまた手に入れたこの黒のトートは、昔と変わらず、礼儀正しく真面目な様子で私の手に収まった。収まったのはいいのだけれど、なんだか今の私にはシンプル過ぎる。だから私はくまのチャームをつけた。昔よりずっと複雑な大人になった私の、それはささやかな抵抗なのだ。




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 花柄、ビニール製のイギリス生まれのこのバッグは、あの頃のりぼんの世界に通じる。陸奥A子や田淵由美子の「乙女チック」漫画が好きだった、永遠の28歳は、いつまで経っても心のどこかに、こんな夢の世界を持っている。それは世界的に見たら、かなり特異な心持ちだが、キャスの花柄バッグはそんな女たちを満足させるのに、ぴったりのバッグなのだ。

 その証拠に代官山の裏路地にあるキャスの直営店は、ロマンチックな可愛さを愛する女たちでいつも溢れている。可愛いものが好きな女は、実は社会で、会社で、家庭で、恋愛においても、ときにまったく別の顔を持つ。

 自分はこうあらねばとか、歳だからとか、結婚しているからとか、そんな常識に縛られて、いつも背筋を伸ばすことを、見えない誰かに、内なる自分に要求されて、本当の自分を大人の顔で隠してしまう。そういう私も、いくら好きでもちょっと自分には可愛すぎるかと思ったのだが、「ママに似合うね」の娘の声に購入を決めた。そういえば、娘が幼いころ、私がきれいな色の洋服を着ると、なんだかとっても嬉しそうにしていたっけ。

 自分で自分を縛らなくていい。気に入ったら持てばいい。そうだ、そんな単純なことなんだ。いくつになってもしたいことをする。そうできる環境を自分でちゃんと作っていく、つまりそういうことなのだ。
 それに、これからの梅雨の季節にキャスのバッグはとっても便利で、雨に濡れてもさっと拭きさえすればいい。皮のバッグみたいに気むずかしくなく、いつも笑顔なバッグなのだ。しかもA4の書類もちゃんと入って、携帯入れるポケットも底敷きもついている、ノスタルジックなバラ柄のバッグも、実はちゃんと今時仕様になっている。

 可愛いバッグを持って歩けば、何の変化もない毎日も楽しくなる。花束をくれる男もいなくなったら、自分でこんなバッグを買ってみるのも悪くない。


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エルメス ケリーバッグ

 鞄が好きだ。生まれたときから、ずっとずっと鞄が好きだ。物心ついたころには、いつでも鞄をふたつみっつぶらさげていたというくらい、私の鞄への想いは深い。

 鞄は女の人生を映し出す。そして同時に社会をも映し出す。近ごろ、エコバッグが流行っているけれど、それだって、環境への関心が高まってきた現れだろう。

 そして、私の中で鞄といえば、やっぱりエルメスのケリーバックだ。初めてその姿を見たのは、もう四半世紀も前、池袋西武の8階だったと思う。まだ学生だった私は、その鞄に恋をした。好きなバッグは年齢とともに、環境の変化とともに変わるけれど、ケリーへの想いは変わらない。そう、まるでずっと憧れていた理想の彼みたいなものなのだ。

 好きなタイプはと聞かれると、無意識に彼のことを答えてる。彼に似た人と付き合っても、やっぱり彼には敵わない。たとえ1年に1度くらいしか逢えなくても、逢う度に「ああ、やっぱり好き」と確認してしまう、そんな存在なのだ、このバッグは。プライドが高くて、何考えているのかわからないくらい凛として、時にはお財布と口紅しか受け止めてくれないクールな面も持ち合わせている。女だったら惹かれないわけないよね、さすがはエルメス。

 欲しくて欲しくて、でもお金もなくて、結局私は分割でそのバッグを買った。出版社のお給料は、その年齢の女子にとっては悪くはなかったが、払い終わるのが結構大変だったのを覚えている。

 自分の手の届かないものを無理して買う女と、諦める女。一見バカな女と賢い女に見えるけれど、諦めたら欲しいものは手に入らない。好きなものは好きと努力する人生のほうが、物わかりのいい堅実な人生よりも、私の性には合っている。


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プロフィール

望月恭子・・・日本女子大学大学院修了後、大手出版社に勤務。
フリーを経て、1990年に出版・広告の企画・制作のためのウインズ株式会社を設立。
食品、美容、ファッションなどなど女性に関わるテーマを幅広く扱う。
書籍の編集をライフワークとし、納豆のムック本、偏差値30シリーズなど 多くの本を手がける。
小田和正を聞きながら、瑛太に恋する水瓶座。

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